いわゆる「徴用工問題」に端を発する日韓の対立が深刻化している。

 安倍政権と文在寅政権に対話の糸口は見つからないばかりか、8月22日には韓国がGSOMIA(日韓情報保護協定)の破棄を発表。対立は安全保障領域にまで及んだ。

   さらに民間にも影響は出ている。8月20日には大韓航空が日本路線を大幅に見直し、一部区間では運航の全面休止を発表した。

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 日韓が衝突する背景にはいつも「歴史認識」の問題が存在する。現在、最大のトピックになっている徴用工問題をはじめ、振り返ると、歴史教科書、竹島、慰安婦……と歴史問題が浮上するたびに、日韓は対立してきた。

韓国の文在寅大統領 ©時事通信社

 なぜ日韓の歴史をめぐる議論は噛みあわないのか。その背景には何があるのか。そこで「文藝春秋」編集部では、朝鮮半島研究を専門とする神戸大学の木村幹教授と、韓国出身のジャーナリスト崔碩栄氏の対談を企画。「韓国における歴史とは何か?」というテーマで語り合ってもらった。

「事実にかなった歴史」ではなく「理にかなった歴史」

 印象的だったのは、対談中、木村教授が次のような指摘をしていたことだ。

「韓国語の『正しい歴史(オルバルン・ヨクサ)』という言葉は、『事実にかなった歴史』という意味ではなく、『理にかなった歴史』『あるべき歴史』という意味で使われます」

神戸大学の木村幹教授 ©文藝春秋

 その上で、木村教授はこのようにも語った。

「文在寅政権の歴史観において何よりも重要なのは、「否定したい歴史」の方です。彼らはその否定の上に別の歴史を建てようとするので、どこまで行ってもそこにフィクション的要素が入ってきてしまう。

 ただ、どのような人々を中心に据えて歴史を語るべきか、という争いをするのは、進歩派だけでなく、保守派も同じ。苦難に満ちた朝鮮半島の近現代史をいかに構成するのかは、彼らにとって共通の問題なのです」

 では、文在寅政権にとっての「否定したい歴史」とは具体的には何なのか。