文春オンライン

2019/08/29

「すごく悩んだのですが、推薦状を出してしまったので、もう他社は受けないようにします。仕方がないので第一志望企業は諦めます」

 概して真面目で誠実な理系学生の中には、このように考えてしまう人もいる。

「これって、一種のオワハラですよね。まあ、人事の人も大変なんでしょうね。うまく対応しておきます」

 このように企業側の意図を見抜き、大人の対応をする学生もいるが、あくまで少数派だ。要は真面目で誠実な理系学生を、人事がうまく利用しているように私には感じられるのだ。

どんな企業が「後付け推薦」をしている?

 今回、様々な大学、文系理系問わず、20人以上の就活生にあらためてヒアリングをしたが、「後付け推薦」の経験者は理系学生ばかりだった。具体的な企業名を聞くと、メーカー、情報関連の名が上がった。某メーカーでは、後付けの推薦状が内定の“交換条件”になっているという。また別のメーカーでは最終面接前に後付けの推薦状を提出させておきながら、落ちるというひどいケースもあったようだ。

 また「ルート変更」については多くの有名メーカー、通信、情報関連がおこなっていることがわかった。

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「2020年卒は『後付け推薦』が増えた」

「昨年と比較して、今年(2020年3月卒)は、後付け推薦が増えた印象があります」

 某有名大学のキャリアセンターのスタッフもこのように言う。その要因には、少子化を背景とした若手の人手不足があげられるだろう。

 特に理系学生は「就活ナビでは集まらない」「合同説明会に参加しても会えない」「新卒紹介の会社にお願いしても紹介してもらえない」と言う話を中小企業の人事からよく聞く。

 大手でも、NECで年収1000万円、ソニーで年収730万円など、新卒高度人材に多額の初任給を提示することが話題になっている。それだけ優秀な若手を採用することが難しいのだ。

 そんな中、経営陣から人事部へ若手人材確保の圧力が強まり、「後付け推薦」「ルート変更」が発生していると思われる。

何が問題なのか?

 では「後付け推薦」「ルート変更」は、何が問題なのだろうか。まず、下記の経団連が策定する「採用選考の指針」の考え方に反することを指摘したい。

「公平・公正で透明な採用の徹底に努め、(中略)学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない」

 まず、この「採用選考の指針」の考え方に、反している可能性は高いだろう。