8月28日、自民党の上野宏史衆院議員が、厚生労働政務官を辞任する意向を固めたという。外国人労働者の在留資格をめぐって口利きを行う見返りに、企業に金銭を求めていたと報じられたからだ。事実なら、あっせん利得処罰法に違反している可能性が高い。

 上野氏の発言とともに、政権に近い議員による数々の疑惑をあらためて振り返ってみたい。

「これあっせん利得になっちゃいますよ、代議士」

上野宏史 自民党・厚生労働政務官
「だってこれ、うちがネオキャリアからお金もらう案件でやってんだから」

『週刊文春』8月29日号

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 厚生労働政務官を務める自民党の上野宏史衆院議員が、外国人労働者の在留資格の認定をめぐって、法務省に口利きを行う見返りに、人材派遣会社「ネオキャリア」に1人あたり2万円の金銭を求めていたという疑いが報じられた。『週刊文春』により、あっせん利得を指摘する政策秘書と上野氏のやりとりと、その音声が公開されている。

上野宏史氏 ©時事通信社

 ネオキャリアは全国の飲食店やドラッグストアなどに、日本人のみならず外国人も派遣している会社だ。彼らの在留資格を取るため、同社は各地方の法務省外局「出入国在留管理局」に大量の交付申請を行っているのだが、よりスピーディーに交付を受けるため、上野氏に口利きを依頼した模様。同社が上野氏の事務所に送ったリストに記されていた在留資格申請中の外国人は187人に上る。

 音声には「これあっせん利得になっちゃいますよ、代議士」と指摘する政策秘書に対する暴言やパワハラも含まれていた。政策秘書が13件の認定の可否を上野氏に報告せず、直接ネオキャリアの担当者に伝えると、上野氏は激昂。ネオキャリアから受け取るつもりだった13件分、26万円を代わりに支払うよう政策秘書に命じた。その際に言い放ったのが冒頭の言葉だ。上野氏は音声の中で、再三「お金をもらう案件」「僕がもらうはずのお金」と繰り返していた。

安倍首相が仲人を務めた元経産省のエリート

 安倍政権は外国人労働者受け入れ拡大を推進しており、今年4月に法務省の「入国管理局」が「出入国在留管理庁」へ格上げされ、新たな在留資格「特定技能」が設けられた。これに厚労省も連動し、「技能実習の職種のあり方に関する検討チーム」を設置したが、上野氏はこのトップにあたる。

安倍晋三首相 ©山元茂樹/文藝春秋

 元東京地検検事の落合洋司弁護士は次のように指摘する。

「国会議員や秘書が、国が締結する契約などに関し、請託を受けて、権限に基づく影響力を行使して公務員に職務上の行為をさせるようあっせんし、報酬を得ることはあっせん利得処罰法違反となります」(『週刊文春』8月29日号)

 上野氏は元経産省のエリート。参院から1期目の途中で衆院に鞍替えし、現在2期目。昨年10月の内閣改造で初めて政務三役入りを果たした。総裁派閥の細田派に属しており、結婚の際は安倍晋三幹事長代理(当時)が仲人を務めていた。