全世界で100万部、日本でも30万部を超えるベストセラー。昨年4月に発売された『ファクトフルネス』が、空前のセンセーションを巻き起こし続けている。

 バラク・オバマが「人類に希望を抱かせてくれる作品だ」と絶賛すれば、ビル・ゲイツは全米の大学を卒業する学生を対象に、1冊ずつプレゼントしても構わないと申し出る。こんな話題もブームに火を付けた格好だ。

 去る7月に来日した著者の1人、アンナ・ロスリング・ロンランドは、世界的ベストセラーが生まれた理由を、次のように分析してみせた。

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アンナ・ロスリング・ロンランド氏 ©文藝春秋

「私たちが目指したのは、自分たちのいる世界を正しく理解するためにファクトを示すことと、どうして世界に対して誤ったイメージを抱いてしまうのかを平易に解説することでした。この本で引用されている実例のほとんどは、私たちがいかに誤ったイメージで世界を捉えてしまうかを示した失敗談になっている。そういう話の方が読んでいて面白いし、学べる要素も多いですから」

極度の貧困にある人の割合は過去20年間で半分に

 我々は文明人を自負しているし、世界で起きていることを正しく把握しているつもりでいる。しかし『ファクトフルネス』は、その実態がお寒い限りであることを、ユーモラスな語り口と豊富なデータでわかりやすく教えてくれるのだ。

 一例を挙げよう。

ファクトフルネス』(日経BP社)

 たとえば世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は過去20年間で半分に減り、平均寿命は1800年には31歳に留まっていたものが、今や約70歳にまで延びた。

 ところが我々はそんな事実に気づきもせずに、様々な国々を先進国と後進国に安直に2分割し、持てるものと持たざるものの格差は拡大しているはずだ、人類社会の未来はお先真っ暗だと勝手に悲観してしまう。この傾向は、いわゆるインテリを自認する人々や、社会問題に対する関心が高い良識派ほど顕著になるという。最近、巷で持て囃されている「意識高い系」も例に漏れないだろう。