「今そこにあるファクト」に目を向ける
世界を正しく認識するためには、どうすればいいのか。
本書は「今そこにあるファクト」に目を向けることが、最も簡単で確実な方法だと説く。統計やデータに基づいた視点に立てば、自分たちがつい陥りがちな蛸壺的発想(バイアス)から逃れ、世界を見る目を養っていくことができるようになる。
とはいえ21世紀とは、フェイクニュースが氾濫し、ファクトそのものの在処がわかり難くなった時代でもある。
現に米国では3年前の大統領選挙の際に、「ローマ法王がドナルド・トランプを支持した」「ヒラリー・クリントン陣営が、ピザ屋を舞台にした児童売春に関わっている」というデタラメなニュースがネットやSNSで拡散。一般大衆が真に受けたためにトランプ政権が誕生するなどという、それこそ嘘のようなシナリオが現実になった。
かくしてホワイトハウス入りを果たしたトランプは、以前にも増してフェイクニュースを垂れ流し始める。この異様な事態が、政治、経済、外交、軍事、社会や文化問題に至るまでさらなる混乱をもたらし、深刻な問題を招いていることはご承知の通りだ。
「良くも悪くも、情報に対する人々の意識が高まった」
取材の席では、アンナ・ロスリング・ロンランドにフェイクニュースについても問うた。すると彼女は意外にも、その恩恵について語り始めた。
「公平な目で見れば、フェイクニュースが大きな問題になったことは、社会全体にプラスの効果をもたらした側面もあります。良くも悪くも、トランプ大統領が就任したのをきっかけに、情報に対する人々の意識が高まったのは否定できませんから。
でもフェイクニュースが溢れた結果、ニュースに耳を傾けること自体を完全に止めてしまう人たちも出てきている。これははるかに深刻な影響をもたらします」