ロメロと安達了一のハイタッチ。どちらかのホームランのあと、ベンチでの祝福の最後はお決まりの2人のハイタッチ。吉田正尚のフルスイングや山本由伸のストレートに並ぶ、極めて貴重な?オリックスの見どころのひとつだ。

 

 思えば2人とも満身創痍で戦っている。もちろん、彼らが居るのと居ないのとではチーム状況が大きく変わる。戦うチームの一員としての使命感、プロの野球人としての誇りがそうさせるのかもしれないが、今シーズンを通して観戦してきた自分としては、まだ経験の浅い若いチームを鼓舞するように無理を押して戦場に身を置いているように思えてしまう。特に安達。何度もこのコラムでも触れたが、もともと潰瘍性大腸炎という難病と闘いながらグラウンドに立ち続けているのだから。

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プロ8年目、31歳の安達了一

ロメロと安達、攻守の要が勝利の鍵を握ったシーズン

 数ヶ月前、大城滉二の活躍に歓喜というよりかは、どこか安堵した自分がいた。野球人にしてみればチームメイトとはいえ、ライバルの活躍は手放しで喜べるものではないのかもしれない。自分の出場機会を奪われる形になり兼ねないからだ。それでも見ている我々からすれば体調が万全とは言えない安達に大きな負担を強いるよりも、楽なポストに身を置いての、言うなれば「美味しい所取り」をしながらも長く活躍して欲しいと望んでしまう。怪我に苦しんで引退を早めた選手を数限りなく見てきたのだから。安堵という表現を使ったのは、大城の活躍でやっと“良い意味での”「安達離れ」ができると思ったからだろうか。

 しかし、シーズンが進みパ・リーグの順位争いが熾烈になった炎天下の頃、そこには当たり前のように連日ショートを守り続ける安達がいた。我々バファローズファンは開幕から数ヶ月を費やして、やはり安達の代わりは安達しかいない事を思い知らされてしまう形となってしまった。

 強肩と制球の良さがそれを可能にするのだろうが、安達の守備位置は深い。いや、深いと言うよりかは広い。深く守る事で広い範囲をカバーできる貴重な内野手だ。特に両翼に強打者のポジションを配置する傾向にある日本のプロ野球では、センターラインの守備力が大きく勝敗を分かつ結果になる。ショートやセカンド、センターと言ったポジションの選手の守備力が勝敗の鍵を握るひとつの大きな要素と言えるだろう。そう言った意味で2019年のオリックス・バファローズというチームは、4番のロメロ、ショートに安達という2人の経験豊かな攻守の要が、台頭し始めた才能溢れる若手選手たちを牽引したチームだったのだろう。もはや攻守の要を超えて世代の要、この2人の離脱がチームから勝利を遠ざける事になったのだからそれは明白である。