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「終日運休するとお伝えしたのに途中から動かしてしまうとお客さまの混乱を招いてしまう。また、それに加えて運転再開に向けては乗務員の手配や運行システムへのダイヤの入力など多くの作業があり、現実的には難しい。運休すると決めたからには決めた通りに運休することで、安全を守り混乱を防ぐ。社会との信頼関係があって成り立つ、それが計画運休ということです」

“空振り”にはやっぱり批判もあったけれど……

 ただ、当然このような仕組みであれば“空振り”することもある。事実、2014年10月に初めて計画運休を実施した際は、結果は空振りで終わってしまったという。

「当時は多くのご批判もいただきました。ただ、中には『安全を守るためには必要な措置だった』というご意見もありました。いずれにしても安全を第一に考えた対応なので、空振りになったことで現場の対応を責めたり、その後の計画運休の判断に躊躇が生まれたりすることがないようにしています。空振りするかどうかはあくまでも結果論ですから」

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こちらも昨年9月、台風24号で計画運休が実施されたときの新宿駅 ©AFLO

では計画運休はどんな基準で決まる?

 では、どのような基準で計画運休を行なっているのだろうか。鉄道網が全面的にストップすれば社会的な影響は小さくない。実施の判断には明確な基準が求められるはずだ。

「各線区に風や雨の規制値が設けられていまして、一定の雨量や風速に達すると運転をストップすることになっています。そのため、規制値を上回るかどうかの事前の予測が重要になる。弊社では気象データ分析会社と契約をしており、各線区それぞれにおける風速や雨量の予測をしてもらい、台風の進路や規模に加えてこれらの予測をもとに計画運休の実施を判断しています。規制値を超える区間が大半に及ぶ予報が出ていれば全面的に運休、すなわち計画運休をする可能性がある、ということですね」

今年のお盆、8月15日も台風10号の影響で計画運休が実施された ©共同通信社

 実際にはたとえば近畿エリアすべての線区で規制値を超える予報が出るとは限らない。ただ、運行形態の上では複数の路線の間で直通運転を行なっており、さらに車両基地がある線区が規制値を上回れば車両の運用も難しくなる。そのため、無理に一部の線区だけ動かすことはせずに全面的な運休に踏み切るというわけだ。

「計画運休という言葉を前広に使うことで、企業や学校などの社会活動をどうするのか、早めに判断していただきたいと考えています。一部の線区だけの運休ならばそこまでは必要ないですから、計画運休という言葉は今の時点では使っていません。ただし、社会全体の認識と合わせることも必要であり、今後用語の使い方を検討していくことは必要かと考えています」