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 例えば台風が昼過ぎから夜にかけて直撃する予報が出ているケース。朝はまだ台風の影響も少なく電車を走らせることはできる。けれど、告知が不十分であれば出勤したものの帰宅時にはすべての電車がストップしていて多数の帰宅困難者が生まれる――。計画運休にはこうした混乱を防ぐという目的もある。そして最大の目的は“安全”だ。

「お客さまを電車に閉じ込めることに……」山崎駅付近での駅間停車

 万が一、台風の雨風が吹き荒れる中で駅間で電車が停まってしまえば、暴風雨の車外に乗客を放り出すわけにもいかず、かといって長時間車内に閉じ込めれば体調を崩す人も出てくる。実際、2015年7月には台風通過後の残り雨が想定以上となって規制値を上回り、JR西日本でもJR京都線山崎駅付近に長時間駅間停車した例があった。

「そのときには多くのお客さまを電車の中に閉じ込めることになってしまいました。実際に救急車を呼ぶようなことにもなりましたし、車内のお客さまのために弊社の社員が総出でパンなどをコンビニで買い集めて届けるようなこともあった。電車の中にはトイレはせいぜい2つしかないですから、そういう問題もある。だから駅間停車のようなことは極力避けたいと思っているんです」

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「ダイヤを乱さない」ための計画運休

 計画運休は、こうした過去の苦い経験の中から生まれた対応策だったというわけだ。また、計画運休をすることで運転再開がスムーズに行くというメリットもあるという。行き当たりばったりで運行を続けていると車両や乗務員があちこちに点在していて運転再開が容易でなくなるし、台風通過後の線路の点検などにも手間がかかる。

8月15日の計画運休では山陽新幹線・新大阪~小倉間の運転を見合わせた ©iStock.com

「台風が通過して風雨がおさまったらすぐに再開、というわけにはいきません。線路や路盤などが安全な状態か、倒木や倒竹、飛来物がないかなどの点検をする必要があります。全区間を担当社員が目で確認する。それを終えてはじめて運転が再開できる。その点検の人員配置や準備も計画運休ならばスムーズにできますし、運行システムへのダイヤの入力なども準備できます」

 昨年の台風24号では、日曜日の夕方以降に台風が首都圏に襲来。翌月曜日の朝には台風は過ぎ去っていたが、架線や線路への被害が当日朝に見つかってダイヤが乱れて混乱を招いた。数日前から準備している計画運休ならば、こうしたことも防げるというわけだ。では、今後に向けてはどのような課題があるのか。