「脳震盪」か「脳挫傷」かを見極めるポイントは“意識の有無”
脳挫傷も外傷性の病態だが、脳震盪と違って脳の実質(本体)にダメージが及んでいる状況。こちらは入院を要し、場合によっては外科的な手術になることもある。
「脳挫傷なら救急要請をしてもいいが、脳震盪はその必要はない。家族の運転する車やタクシーで大丈夫。逆に脳震盪で急いで救急車に乗せると、車の揺れで吐き気を助長し、症状が悪化することもある。病院に連れてくるときは“ゆっくり”と“静かに”を心がけてほしい」(朝本医師)
とはいえ、転倒や事故などで頭を強く打てば誰だって不安になるし、そもそもいま出ている症状が脳震盪によるものか脳挫傷によるものなのかは医療機関を受診しなければわからない。何を基準に救急車を呼ぶかタクシーで行くかの判断をすればいいのだろう。
朝本医師はこうアドバイスする。
「救急要請すべきか否かの判断材料は“意識の有無”に尽きる。痛みや吐き気がある、あるいは実際に嘔吐していたとしても、問いかけに対して正常な反応があり、会話ができればまず大丈夫。逆に意識が戻らない、あるいは会話が成立しない場合は脳挫傷の危険性があるので、119番通報も視野に入れる必要があります」
“たんこぶの有無”で脳の状態は判断できない
頭部外傷に関連して、昔から巷間に伝わるデマがある。
「たんこぶができたらひと安心」
というもの。
「まったく根拠のない話です。たんこぶは頭部の皮下で起きている血腫で、脳の損傷とはまったくの別物。たんこぶそのものは放置しても時間が経てば自然に治っていくが、たんこぶの有無で脳の状態は判断できません」
おそらくこれは、「たんこぶだけなら心配はいらない」という話が拡大解釈されて広まってしまったのだろう。ちなみに、たんこぶだけで脳に異常がない時は「冷やす」ことで症状を和らげる効果も期待できるが、脳震盪の場合は冷やすことに意味はない。