「テレビに出ると自分を見る人の目がこんなにも変わるんだ」
――そして、1年足らずで大会優勝者もいた開成高校クイズ研究部内でトップクラスの実力になる。
田村 元々の知識量が周りの人よりもあったことが僕の強みでした。でも、どれだけ知っていても早押しで負けてしまったら答えることすらできないのが、競技クイズなんですよね。なので、僕の場合はとにかく早押しでどう勝つかが最初の課題でした。部活は緩くても、クイズが強い人は伊沢をはじめ何人もいたので練習相手には困りませんでしたね。
――そこから一気に実力をつけて、高校2年生の時の『高校生クイズ』に挑むわけですね。
田村 あんまり振り返りたくない大会ではあります。高校2年生の時に組んだチームはみんな同級生で伊沢はいなかったんですが、全国大会の準決勝まで進めたのは全くの予想外でした。結局、サドンデスで出題された「サイコロを6回振ったとき、何回目かに、それまで出た数の総和が6になるような確率を求めなさい」という問題で、単純な計算ミスをして負けてしまうんですけど。
――あまり振り返りたくないというのは悔しすぎて、ですか?
田村 もちろん悔しかったですけど、結果よりも、テレビに出ると自分を見る人の目がこんなにも変わるんだっていうのを高校生なりにもすごく考えてしまって。
――周りの目が変わったと。
田村 いつも友人が僕に接してくる態度とは全く違う感覚で話されることも多くなって、確かに話しかけられているんだけどまるで違う人を見て話しかけられてるような、妙な違和感がありました。駅のホームで知らない人に話しかけられたり、チラチラ見られることも多くなって。それまで全く経験したことのなかった状況に戸惑ってしまって、モヤモヤとしたものを抱えてしまったこともありましたね。
『高校生クイズ』への出場を決意した理由
――しかし翌年の夏の『高校生クイズ』にも出場されますね。戸惑うこともあった中で、出場を決意されたのはどうしてですか?
田村 伊沢に説得されたんですよ。完璧に練られた優勝までのシナリオをプレゼンされたうえで「一緒に出てくれ」と言われてしまって(笑)。
――伊沢さんも大胆ですね。さらに伊沢さんの著書には「田村にクイズを教えたのは俺だから!」なんてエピソードも。
田村 それは本当にそうで、年は2コ下ですがクイズ歴で言うと先輩なんですよね。でも『高校生クイズ』の誘いは、正直すごく迷いました。高3の夏なので受験前にまた目立って、そのプレッシャーのなかで受験に失敗したら……とか色々ネガティブに考えてしまって。
――でも伊沢さんの中では出場する前から、田村さんと出場して優勝するシナリオがしっかり立てられていた。
田村 関東で開かれている高校生以下のクイズ大会で成績を残している3人で組んで、さらに前年度準決勝進出者である僕をリーダーに据える。伊沢が早押しクイズの一問一答系に長けていて、もう1人の大場が歴史とか首都とか、いわゆるデータベース的なジャンルに長けている。実力的にも、話題性でも盤石という編成を伊沢がすべて考えていました。
――高1なのにすごいプロデュース力ですね。それにしても受験勉強もしなくてはならないのに大会前って、練習もハードになりますよね?
田村 僕の場合は、受験勉強も大会の練習になったんですよ。前回大会で僕が計算ミスをやらかしてしまった準決勝が、当時は「お勉強ラウンド」と呼ばれていて、高校レベルの知識をフルに使って答える問題が多かったんです。クイズの実力で言えば、伊沢が一番強いわけですが、ここでは伊沢は信用できない(笑)。まだ高校1年生でしたからね。