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「直径10キロの隕石が地球に衝突した時、発生する津波の高さを計算せよ」

――そこから勝ち進み、前回大会で惜しくも敗退した準決勝に進みます。

田村 なんとか全国大会まで駒を進めることができた後は、順調に進みました。一般的なクイズ問題であれば3人とも対応できましたし、知識量でも早押しの速さでも負けないと思っていました。

――実際に準決勝で出題された「直径10キロの隕石が地球に衝突した時、発生する津波の高さを計算せよ」とかは、本当に高校生の知識で解けたんですか?

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田村 準決勝では、高校で習う物理の内容を大きく逸脱する問題は出ないんですが、計算がとにかく複雑なんですよね。他の2人は学年も下だし、文系だったので、3人のうちの誰かがというよりは、僕が答えられるかどうかの勝負でした。準決勝まで来て、伊沢の優勝へのシナリオを僕の計算ミスで台無しにするわけにもいかないので、あの準決勝が一番プレッシャーでしたね……。

 

3人で書いた「フィネガンズ・ウェイク」で優勝

――そして無事決勝に進出。相手は『高校生クイズ』で優勝経験もあった強敵・浦和高校でした。

田村 関東のクイズ研究部の人たちとは普段から交流があったので、お互いにどれくらいの実力かもよく分かっている状況でした。なので「この問題は絶対に正解してくるから間違えられない」とかも考えてしまって、それだけに緊張感がありました。

――出題される問題は“東大生正解率1%以下”の超難問ばかり。両者譲らずの攻防でしたが、最初にリードしたのは田村さん率いる開成高校でした。問題は『1816年実際の難破事件を題材に描かれたフランスの画家 テオドール・ジェリコーの代表作は何?』 答えは「メデューズ号の筏」でした。

田村 この絵画については、僕も自分で問題を作ったことがありました。他の2人も記憶に残っていたようで、危なげなく答えることができました。

――そして、9点対6点で優勝まで大手、という中で出された問題が「素粒子の一種 クオークの由来となった鳥の鳴き声が登場するジェームズ・ジョイスの小説は?」でした。優勝が決まった瞬間を覚えていますか?

田村 最後の答えは3人でペンを回しながら「フィネガンズ・ウェイク」と書いたのを覚えています。でも優勝が決まった瞬間は正直嬉しさよりも、伊沢のシナリオを壊さずに済んだ、という安堵の方が大きかったですね(笑)。

 

※後編〈「伊沢拓司と僕は性格が真逆なんです」イケメン開成生・田村正資が語る『高校生クイズ』のその後〉に続く

写真=橋本篤/文藝春秋