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「中国スゴイ!」と持ち上げられた無人コンビニ、バブル崩壊でただの箱に

「中国スゴイ!」と持ち上げられた無人コンビニ、バブル崩壊でただの箱に

流行らなかった理由は、お客さんが買いたがらなかったから

2019/09/14
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実は「面倒だから」客が入りたがらない

 確かに「面積は小さいのでテナント料は安い」「無人なので人件費も少ない」という論法は間違っていないんです。たとえ商品の品出しのために人を使ったとしてもまだ安い。同社資料では、一般的なコンビニに比べて運用コストはわずか15%に削減できるとしています。運用コストは毎月2500元(約3万8000円)で済み、従来型コンビニの月1万5000元(約22万5000円)よりはるかに安いとあります。建設設置コストは8万元(約120万円)で、純利益は25%前後、1日の売上が1000元(約1万5000円)なら2年で回収できるという計算です。

 でも、ほとんどの場所で誰も買わないから売上が伸びなかった。収入がなければコストが低かろうと儲かりようがありません。293店舗あった2018年9月中旬時点で、1日の売上が1000元(約1万5000円)を超えていたのは北京市、浙江省、四川省などにあるわずか40店舗で、逆に108店舗は1日の売上が300元(約4500円)にすら届きませんでした。

自販機が敷き詰められた無人コンビニ「U-MI」も利用者は少ない ©山谷剛史

 無人店は路面にあります。高層マンションが建ち並ぶ都市で、1階まで下りれば個人商店やコンビニやスーパーなど様々な商店の選択肢があります。スマホでアプリを起動してドアロックを解除してなんて面倒くさいことをするよりは、馴染みの店でさっと買ったほうが手っ取り早いものです。夏の汗だくの時期や冬の極寒の時期にスマホを取り出してアプリを起動して店のロックを解除して、なんて作業はストレスしか生みません。酷暑なら、さっさとエアコンの効いた涼しい店内に入りたいものですよね。1階まで下りなくても、今はUber Eatsのようなデリバリーサービスは多くの店に対応していて、家まで運んでくれます。

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 北京の物美便利店という有力なコンビニチェーンも、無人店のテスト運用を行いました。夜だけ無人化するというものです。すると、有人であれば夜間1500元(約2万3000円)売上があるところが、無人にしたら売上がその3分の1の500元まで落ちるという結果になったのです。北京で夜間に店員を1人雇っても人件費は200元で済むので、これでは大損という結論になりました。無人店は面倒なのでお客さんが入りたがらないのです。

RFIDタグが付いた商品だがラインアップが微妙 ©︎山谷剛史

 さらに無人コンビニでは商品にRFIDタグの入ったハイテクシールをつけているところが多いのですが、このRFIDタグは無料ではなく、1つにつき0.3元(3角。約5円)かかるので、これが商品価格に跳ね返ります。RFIDはコストがかさむため、次にハイテクな画像識別技術をレジに採用し、コスト削減を図りました。すると、一部新製品については識別用のデータが不足しているため、識別率が低いという結果に。客としてはハイテクセルフレジで新商品が認証されず、ストレスがたまるだけで、これもまたリピーターが忌避する要因となります。

 先に各地で撤退し、店舗数が減ったと書きましたが、結果が出ないので各地の政府が無人コンビニを見限ったのでしょう。結果研究開発費は削減され、新システムや新商品の登録もままならなくなります。