恋愛ではなく連帯を描く物語、それが『凪のお暇』だ。
一見、現在ドラマも放映され累計部数200万部も突破した人気漫画『凪のお暇』は、ひとりの「アラサー女性」の恋愛や生き方をめぐる物語に見える。主人公の凪は、会社での人付き合いや彼氏との付き合いに悩み、「お暇」つまり会社を辞め、無職期間を過ごす。そのなかで凪は自分のありかたや生き方に悩む。そして昔の自分を振り回していた、元彼の慎二、同僚、母親とも向き合っていく。――これが『凪のお暇』の主なストーリーになっている。
しかし凪が悩んでいるだけの話ではない。作中、凪は「お暇」を通してさまざまな人に出会う。アパートに住んでいる母娘、老女、同じく求職中の女性、とあるバーで働く女性たち。「お暇」がなかったら出会わなかったような、「ご近所さん」ともいえる人々たちと交流するのである。
そしてアパートの隣には、とある男性が住んでいた。彼は作中「ゴン」と呼ばれ、「ゆるっとした空気」で人々を分け隔てなく包み込むキャラクターとして描かれる。ゴンと凪は、一度は恋愛関係になったが、その後「ご近所さん」に戻る……という過程が描かれているのである。
漫画にはなかったドラマのオリジナルエピソードの意味
さて、ここで注目したいのが、漫画にはなかったドラマのオリジナルエピソードである。原作漫画では強調されなかった、凪の元彼・慎二と凪のご近所さん(凪の元彼でもある)ゴンの関係がドラマではより時間をとって描かれているのだ。
慎二はある意味凪と同じく、空気を読みつつ生きるサラリーマンである。慎二は一見有能に見え、凪よりも「うまく」生きているように見える。しかしドラマでは、そんな慎二自身も自身の生きづらさに気づき、過呼吸になったり、会社を休んだりすることになる。
強調したいのが、ここで会社を休むことになったきっかけが、凪ではなく、ゴンだということだ。