日本一メディアに登場する書店はどこだろう。前回取材させていただいた紀伊國屋書店新宿本店? それとも三省堂書店神保町本店? 代官山 蔦屋書店? テレビ映像への登場回数では、実はここ、大盛堂書店なのではと、聞いたことがある。1回の青信号で3000人が渡るともいう渋谷ハチ公口前のスクランブル交差点は、東京を代表する風景としておなじみだ。センター街の入り口に面した小さなビルに、渋谷駅からも見える大きな文字の「大盛堂書店」の看板がある。

渋谷ハチ公口前スクランブル交差点。
大盛堂書店。1階はファッション誌、タレント本、地下はコミックス。

 大盛堂書店は、1階はファッションを中心にした雑誌売り場、タレントやモデルの著書や写真集で華やかな売り場、地下はバランスの取れた選書のコミックス売り場、2階は文学やエッセイ、カルチャーなど、ディープな書籍の売り場、それぞれに個性的なフロアになっている。

SHIBUYA TSUTAYAの巨大な店舗に隣接し、近くにはブックファースト渋谷文化村通り店、Bunkamura通りをまっすぐ行くとMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店もあるが、2階売り場の担当、山本亮さんによると、渋谷ではそれぞれの書店が棲み分けていて、競合を意識することはあまりないのだという。

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2階に上がってすぐの棚で独自のフェアを展開。

 お店自体は目立つ場所にあるとはいえ、1階の雑誌、タレント本と、2階の書籍売り場は大きく客層は違う。1階のお客様に2階に上がってきてもらうのは難しい。フェアやイベントをきっかけに来店してもらう、特徴的な棚を作る、ただ売るだけではなく、たとえばフリーペーパーをオマケに付けて、面白いなと思ってもらえれば、また次につながる。

ファンも多いフリーペーパー『大盛堂書店2F通信』。

 そんな工夫の中で作られている『大盛堂書店2F通信』は、ファンが多く、店舗やチェーンを超えて紙上に登場する書店員さんも多い。9月号では、「週末の旅は本屋さん」でも紹介したことがあるTSUTAYA寝屋川駅前店の発行の『ぶんこでいず』とコラボして、東西書店員の紙上対談をしている。フリーペーパーの企画は、何かしら売り場にいればネタはあるし、常時いくつかのストックがあって、苦労することはないとのこと。

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