「地上波でできないことに挑戦」? Netflixドラマ『全裸監督』への高評価
おぐら あおりといえば、ドラマ『全裸監督』の広告がけっこうな規模で展開されていました。
速水 渋谷駅をジャックして、「『コンプライアンス』に塗りつぶされるこの時代。」っていうポスターもたくさん見かけたね。
おぐら ただ、裸のシーンを引き合いに出して、これは地上波では無理、さすがNetflixという声については、ほめるところそこなの? って思います。Amazonプライムの『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』のときも、過激な下ネタや股間のアップに喜んでいる人が一定数いましたけど。
速水 でも、地上波で流せないというのは本当だけどね。今の地上波でエロができないのは、スポンサーにクレームが行くのを恐れているから。昔からテレビで女性の裸が出ると苦情の電話はたくさん来たんだよ。でも、かつては局のプロデューサーとかスタッフ宛に苦情が来た。今のクレーマーは、苦情を直接スポンサーにぶつけるからね。
おぐら コンプライアンスの問題にしても、有料の動画作品は表現の自由度が高いことはもう前提で、だからこそ何をどう表現するかっていうことが一番大事なんじゃないの?って思います。
速水 そういう意味では、『全裸監督』は実際の話をかなり脚色し、しかも1980年代の話にうまく絞ったのが成功している。一方で、ポルノや黒社会の話を描きながら、主人公を美化しているという批判もある。これはばかばかしすぎるから無視でいいと思うけど。
本人不在で広がる「許可とってるの?」という批判の違和感
おぐら モデルとなった実在の女優に許可をとっているのか?という批判もあります。これについては、Netflixが配信停止の措置をとることはないんでしょうか。
速水 配信停止しないでしょ。
おぐら それは課金制でスポンサーもいないから、批判に応じる必要はないってことですか?
速水 地上波のテレビみたいな広告モデルだと、スポンサーへの電凸で番組が終わる可能性もあるけど。Twitterで「許可とってるのか」と指摘する人たちがいるってだけで、配信をやめろっていう話ではない。
おぐら でも許可をとっていないことは、ビジネスモデルの話ではなく、人権の問題になりませんか。
速水 そこには、ポルノ出演者=被害者みたいな決めつけがある気がする。黒木香本人が被害を訴えればそうかもしれないけど、本人不在で人権うんぬんっていうのは意味がわからない。少なくとも、これまでの黒木香がメディアに対して起こしてきた裁判にしても、AVへの出演を取り消したがっているわけではないし。