猫の考えてること、知りたくないですか?
ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズ、『わけあって絶滅しました』の監修者としても知られる動物学者の今泉忠明さんが、解剖学、動物行動学の知見を駆使して、猫脳の謎に迫った『猫脳がわかる!』(文春新書)を一部公開します。猫の気持ち、知ってください!
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口を開けて鳴かない、という独特な行動とは真逆の、口を閉じて鳴くパターンが、猫のゴロゴロ音でしょう。猫を飼ったことがある人なら、きっと一度は聞いたことがある、あの摩訶不思議な音です。喉を鳴らすというくらいなので、猫がゴロゴロ鳴いているときに首元に手を置くと、振動しているのがよくわかります。
最近になって、米国ルイジアナ州のテュレーン大学の研究チームが、このゴロゴロ音を詳細に調べました。それによると、猫のゴロゴロ音は約65デシベル(人が話すくらいの音量)で、喉頭が規則的に振動して起こるものと判明。喉頭の筋肉が、2枚の声帯にある隙間を開閉させて、喉を通る空気流を震わせていたのです。
このゴロゴロ音も、まさしく猫脳の仕業といえます。なぜなら、この振動は、神経細胞の興奮と関係しているからです。脳は、いってみれば神経細胞であるニューロンの集まりです。脳が働くときには、ニューロンからニューロンへ電気信号が流れます。この電気信号をインパルスといい、ニューロンが刺激を受けて興奮することで起こります。つまりインパルスが伝わることによって鳴るゴロゴロ音は、猫脳内の神経中枢の活動が関与していることになるわけです。