猫の考えてること、知りたくないですか?
ベストセラー『ざんねんないきもの事典』シリーズ、『わけあって絶滅しました』の監修者としても知られる動物学者の今泉忠明さんが、解剖学、動物行動学の知見を駆使して、猫脳の謎に迫った『猫脳がわかる!』を一部公開します。猫の気持ちを知ってください!

◆ ◆ ◆ 

©文藝春秋

 顔の表情とともに、猫の感情がよく表れるのが、しっぽです。猫の場合、「しっぽは口ほどに物を言う」、でしょうか。猫のしっぽの代表的な動きと、そのときの猫の気持ちは、次のようになります。

「しっぽを垂直にピンと立てる」…もともとは子猫が母猫に近づく際にするしぐさです。子猫は生まれたての頃、母猫に肛門を舐めてもらって排泄を促されます。そのときにしっぽを立てることを覚えて、母猫に近づくときにはしっぽを立てるようになります。また、母猫が子猫を連れて狩りへ行くときには、母猫も子猫もしっぽをピンと立てています。これは、子猫が母猫の真似をしている意味もありますが、道中はぐれないように目印としてしっぽが機能しているのです。その名残で、しっぽをピンと立てているときの猫の気持ちは、「かまって」「ここにいるよ」「うれしい」などで、相手に好意を伝えている行動です。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

「しっぽの先をパタパタと小さく振る」…飼い主が名前を呼んでも、猫は鳴かずにしっぽだけを動かすことってありませんか? 見るからに「面倒くさそ~」なしぐさですが、まさしくその通り。鳴いたり、近寄っていったりするほどのことでもないと、猫は返事代わりにしっぽの先だけを振ります。また、何か興味をひく物があって、「少し気になる」気分のときも、しっぽの先を小さく振ることがあります。

「しっぽを激しく振って床にたたきつける」…こんなふうにしっぽを振るときの猫は、見るからに人相(猫相?)が悪いですよね。まさに機嫌は最悪といっていいでしょう。しっぽを床に打ち付けることで不満な気持ちを発散させています。音を立てることで、イライラ気分をアピールしているのです。こんなとき、下手にかまうと八つ当たりされる可能性もありますから、放っておいたほうがいいでしょう。