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 一方リハーサルから「自然消滅」した私は、TBSのほかの番組は書いていたので『全員集合』の噂は自然と耳に入る。そして長さんもかつての元気がなくなったという話を聞いて間もなく最終回を迎えたようだった。

 それからの長さんは一転、ほかの民放局でマジメドラマの渋い脇役を演じたり、舞台では『全員集合』時代の「学校コント」の先生役からは想像もできない大マジメな先生役を演じたりしていた。

1974年3月に荒井注氏が退団し、志村けん氏が加入した ©共同通信社

 ある時、偶然が私を彼と会わせ、二人だけで初めて飲んだ。彼の話は専ら『全員集合』時代に終始した。私にとっても忘れられない番組だから、あの番組のプロデューサーが作って、私のような「自然消滅」組も含めて全スタッフに配ったらしい、文字盤に「TBS」のマーク入りで「8時だョ!全員集合 15周年記念」と記載されている腕時計を今も毎日愛用している。ほかの腕時計はとうに動かなくなっているのにこれだけは、確か電池を一度替えただけで私の手首で動き続けているのだ。

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仲本工事氏 ©松園多聞/文藝春秋

 2、3年前に、これも偶然、仲本工事が近くに住んでいるとわかり、昔話をしたくて訪ねた。その時「これ、今も持ってるよ」と手首を見せると彼は驚いた。

「エッ! そんな時計あったの!」

 聞けば肝腎のドリフ一同は誰も知らなかったという。とすれば、かのプロデューサーは全スタッフをねぎらうだけのために作ったのか。居作昌果というその人物に、もしまた偶然があれば聞いてみたかった。

 ちなみに台本と腕時計以外にもう一つ、ドリフ5人のサイン色紙も残してあるが、その5人の中にいるのは荒井注で、志村けんはいない。

放送作家の時間

大倉 徹也

イースト・プレス

2019年9月15日 発売