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 こうして書き直された印刷台本が、2日目のリハーサル日に用意されている。それで長さんのOKが出ると、実際に動いてみる立ち稽古に入る。この時にはディレクターも口を挟むが、その案が採用されるかどうかはむろん長さん次第。午後に始まった立ち稽古がスムースに終わる場合もあれば、夜中になってもまだ続いている場合もある。だからプロデューサーはリハーサル室を終日押さえているのだ。

 その間にはむろん美術担当もいてセットのダメダシも行われる。パトカーがメンバーの住む長屋に突っ込む話が出た時には、パトカーが造り物では面白くない、本物を借りようという話になるのもこの日だ。

2001年の紅白歌合戦に出場したいかりや長介氏 ©共同通信社

 土曜日の本番当日になって初めて本物のセットを見る。ゲストもこの日に来る。稽古通りにいく日もあれば、そうはいかない日もあるので、それを確かめながらの稽古が午前中からまた始まる。本番通りに行える回もあれば、パトカー登場の場面などはブッツケ本番だけ。いずれにしろ本番ギリギリまで稽古は続いて、時には稽古が終わらないまま本番の時間が来てメンバーは慌てて客席に降りる。

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 時間が来た。ゲストを従えて長さんは叫ぶ「8時だョ!」、客席の親子連れと通路にいるメンバーが一斉に応える「全員集合!」、そして開始のテーマ音楽に乗ってメンバーはステージへ。つまり生本番当日を含めて毎週3日間は、こんなスケジュールが繰り返されるのだ。

 本物のパトカーを借りてくるのはプロデューサーの力だが、そんな無理が通っていくのもすべて長さんの「笑い」に賭ける執念の力だということを、私はこの眼で見、体験した。

高木ブー氏 ©文藝春秋

 しかし前半のコントを依頼されることはなく、主にゲストコーナーを書いていた。そこでも長さんのケンエツがあるのはいうまでもない。満足した時、彼は必ずこう言った。

「ありがとうございます。この通りやらせていただきます」

 珍しいことなので、彼がそう言った時の加藤茶の台詞を今でも憶えている。

 それは本番が「母の日」だった時のことだ。ゲスト歌手たちはマジメに母に感謝する歌を歌う。すると加藤も手を挙げて母に感謝する作文を読ませろと言う。その作文。

「ボクのお母さんはリッパだった/ストリッパーだった」

 すると当時ストリップで有名だった曲『タブー』が始まり、加藤はストリッパーの動きで踊りだす。笑いが起こる。すると加藤は言う「ちょっとだけよ、あんたも好きねえ」。 

 そしてよろしき間があって、長さんに叱られるという趣向。