※こちらは公募企画「第1期“書く将棋”新人王戦」に届いた56本の原稿のなかから「観戦記者賞」を受賞して入選したコラムです。おもしろいと思ったら文末の「歩兵ボタン」を押して投票してください!

 君島俊介さんの推薦コメント「将棋にはさまざまな楽しみ方があります。私にとってその一つは、データを調べたり整理したりする中で、思いがけないことに気づいて一人で盛り上がることです。そうした楽しみをtmksStyleさんの作品は、面白く伝えていると思います」

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 私はかつて『名人戦棋譜速報』というウェブサービスを愛用していた。このウェブサービスは月額500円ちょっとの値段で将棋の名人戦と順位戦の全対局の棋譜をリアルタイムで観戦でき、しかもリアルタイムで更新される中継ブログも見られるというサービスだ。一時期の私はここで今ではおなじみとなった『将棋めし』ともいうべき昼食注文と夕食注文、そして終局の瞬間に立ち会うのが日課のようになっていた。「愛用していた」という過去形にしたのは、私自身が小忙しくなってしまって、夕食注文と終局の瞬間に立ち会えなくなってしまい、サービスの利用をやめてしまったからだ。

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なるほど、これが中村修九段の受け将棋か

 さて、話は戻る。

 私は順位戦C級2組からA級までくまなくリアルタイムで見るのが好きだった。特に終局間際のどちらが勝ちを、あるいは負けを読み切ってるのかわからない白熱した展開が好きだった。

 2014年のことである。6月11日の第73期順位戦B級2組1回戦、先手中村修九段vs後手飯島栄治七段戦。相振り飛車の序盤戦から先手中村修九段の穴熊の堅陣を生かした見事な勝利だった。特に穴熊から相手の攻め駒を弾き飛ばす受け将棋が見事だった。王手を一度もされなかった。なるほど、これが中村修九段の受け将棋かとうっすら感心した記憶がある。この時点では「うっすら」だった。