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特集観る将棋、読む将棋

2019/09/29

genre : 社会, 教育

心の奥に「???」とした理由のない違和感が生まれる

 続く7月16日の第73期順位戦B級2組2回戦、先手阿部隆八段vs後手中村修九段戦。後手の中村修九段は四間飛車から向かい飛車に振り直し、玉をゆっくりと穴熊に囲う。阿部隆八段の龍が後手の穴熊陣に近づくが、金を張り付けられやっぱり跳ね返される。7筋に金が縦に3枚並ぶ。この対局もやっぱり王手されなかった。122手で中村修九段が勝利。このあたりから私の頭の中や心の奥に「???」とした理由のない違和感が生まれる。しかし、違和感を覚えたときには何か理由があるはずだ。その理由を調べるのが私は好きなのだ。

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 ここで中村修九段にとって前期の最終戦である第72期順位戦B級2組11回戦、先手中村修九段vs後手田村康介七段戦を調べる。同じ2014年の3月13日の対局だ。この対局は相居飛車の横歩取りだ。振り飛車からの穴熊とは違って、一歩間違えば玉が被弾する乱戦となりやすい形だ。初手から棋譜を追う。「やっぱり王手されていない……」その事実に気づいたとき、私は驚愕し始める。

「やっぱりこうなった」という確信しか感じない

 つまり、順位戦で前期から続けて王手されずに3連勝していたのだ。私の関心は「中村修九段はいつ順位戦で王手されるのか?」に切り替わった。ちなみにさらにもう1局遡った第72期順位戦B級2組10回戦対中田宏樹八段戦は馬と香車で2度王手されていた。それでも中村玉は美濃囲いに守られ、安全と安心感を保ったまま勝利した。

 私はある期待感を持って8月27日の第73期順位戦B級2組3回戦、先手中村修九段vs後手島朗九段戦をリアルタイムで観戦する。

 先手の中村修九段は向かい飛車という振り飛車の形で美濃囲いを経て、奇妙な手順で玉を右下隅の穴熊へと閉じ込めた。穴熊の堅陣に桂馬がちょっかいをかけてくるが、穴熊を守る金銀は乱されることもなく、またも「王手をされず」に鮮やかに勝ちきった。これまでの対局を調べていた私にとっては「やっぱりこうなった」という確信しか感じない勝利だった。ここに中村修九段による「順位戦王手されずに4連勝」が成し遂げられる。

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