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「私がこの母親役をやっていいのか……」

――さて『なつぞら』では「子供ができなかった」というマコさん役でしたが、11月公開の主演映画『夕陽のあと』では子供を産んで、その後育てることがかなわない母親というシリアスな役を演じられます。

貫地谷 はじめに企画書をもらったときは胸が苦しくなりました。私自身は子供がいた経験もないし、この役をやっていいのかという迷いがやっぱりありました。でも振り返ると20代の頃は、社会と関わらなくてもわりと生きてこれちゃったんですよね。でも30代になって、身の回りでも色んな事件が起こっていることにあらためて気づいて。やっぱりエンターテインメントって人を楽しませることが第一にあるかもしれないけど、こういう現実を伝えることも私の仕事の役目なんじゃないかなって最近は思い始めて。それでお引き受けしたんですけど、演じるハードルは高かったですね。

 

――中心に描かれる子ども(豊和くん)は里子で、“生みの親”と“育ての親”がいて、親子の絆って何だろう?と考えさせられます。血のつながりなのか?一緒に過ごした時間なのか?と。 今回の役を演じるまでに下調べはされましたか。

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貫地谷 そうですね。「女性の貧困」についての本を読んだりしました。想像だけでは推し量れない貧困のなかで生活する人のことを知って、決して他人事ではないなと思いました。ほんとに自分もそういう状況になるかもしれないし。それは隣にいる誰かかもしれない。そういう現実がある中で、おせっかいでもそういうことに社会全体が介入していくということが大事なんだなと。最近ニュースを見ていても思いますね。事件が起こってからでは遅いですから。

映画『夕陽のあと』より。子どもを生んだのち、育てることを諦める母親役を演じる

――今回の役だと、例えば特別養子縁組に「生みの親の同意が必要」「子どもが8歳未満(※通常は6歳)」などの要件が出てきます。そういう制度を知っておくことも演技には大事そうです。

貫地谷 そうですね、どういう仕組みになっているのかっていうのは、そのことに限らず最近やっぱり色んなニュースがあるたびに調べます。もう習慣になっています。やっぱり意見がない人に意見を言う資格はないので、自分で見て思うことを記憶しておくというのは自分の日課です。