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元ベイスターズ・須田幸太「あのCSの記憶」――スイッチが入ったのは三浦大輔の引退試合だった

文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019

2019/10/05

戸柱に「オールまっすぐでいきます」って言われて

 マウンドに行った時はまだ緊張しなかった。だけどキャッチャーのトバ(戸柱)に「オールまっすぐでいきます」って言われて、一気に緊張が……。「まっすぐしか投げないですよ」「これで打たれたら別にいいっす」だって。今思えば、あの時そう言われなかったら逆に迷いが生じて、腕が振れなかったかもしれない。ああ言ってくれて腹が決まったんです。

2016年CSファイナル第3戦、広島戦に登板した須田幸太

 新井さんを抑えた瞬間のことは、ほとんど覚えていなくて。気づいたらガッツポーズしてました。カジ(梶谷)がそこまで重症だって知らなかったんです。カジはあの打球に飛び込んで、手、当たったんですよ。左手の薬指をフェンスに強打した。相当痛かったと思う。痛いなんてもんじゃなかったかもしれない。チームメイトは私を含めて皆、満身創痍でした。でもそれぐらいの価値がありました。あのCSには。

CSのラッキーボーイとして期待したい選手

 選手同士がいつでも仲良い訳じゃない。プロになるやつなんて大体我が強いんです。ピッチャーなんか特にそうで、三上も国吉も健二朗も、俺が俺がです(笑)。「お前ら後輩なのに何言ってるんだ」「チームが負けない程度に打たれろ」って思ったこともありますよ、正直。合わなかったら1年喋らないこととかもあったし。ライバルですから。そうなんですけど、その中でもやっぱりチームとして野球をやるとなると、不思議とまとまる。

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 野手との付き合いの方がもっとリラックスしてて、仲が良かったのは(石川)雄洋と、ヒロ(白崎)。あとは山下幸輝とか飛雄馬とか、二軍で一緒に練習やってたやつら。行きつけの美容室がベイスターズの選手がめっちゃ来てるところで、この間行ったら京山いたし、(関根)大気もいるし。美容師さんもベイスターズファンで、そこで話聞いたりして、なんだかんだで繋がっていますね。

 ファンの方から見たら、いつまでも選手同士仲良くあって欲しいって思うかもしれないけど、選手目線で見たら私はもういない人。自分の職場で考えたらそうでしょう。送別会はやるけど、いつまでもその人のこと考えてるわけじゃないですし。私も、みんなも。あ、でも都市対抗優勝した時は、たくさん連絡もらいました。基本的に社会人出のやつは、都市対抗優勝がどれだけすごいことか知ってる。倉本からも珍しくLINEきましたね(笑)。

「倉本からも珍しくLINEきましたね(笑)」

 CSという短期決戦にはラッキーボーイが必要です。あるとしたらピッチャーは今永で、中継ぎだったら三嶋。ヤスは心配してないので。バッターは期待を込めてカジ。筒香、ソト、ロペス、宮崎の4人は打てると思うので、ピンチになったら誰が助けてくれるかって言ったら、やっぱりカジかな。カジとは……昔仲良かったんですけど、引っ越しちゃってからはあまり飲まなくなった。あいつも1億円プレーヤーになったので、誘いづらくなっちゃって(笑)。年俸高い人と行く時って、どっちが払う問題が出てくるから。後輩なのにいっぱいもってるじゃんっていう。あっちも遠慮しないで「いや僕出しますよ」って言ってくれるのもあるし。結局は先輩が払うんですけどね。落ち着いたら、また飲みたいなぁ。

(構成/西澤千央)

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