リーグ2位だった97年、選手たちが語った「今シーズンの戦いで得たもの」
1997年以来のセ・リーグ2位。順位争いの軌道は当時と今シーズンで似ている部分がありました。22年前は8月に20勝を挙げスワローズの背中を捉えながら9月2日横浜スタジアムで石井一久投手(現イーグルスGM)にノーヒットノーランを喫して以降突き放されました。シーズン最終盤、2位が決まった頃、私は何人かの選手に「今シーズンの戦いで得たものは何でしたか?」と問いかけています。古いメモから書き起した答えの一部です。
・石井琢朗さん「優勝争いのきっかけを掴めたこと。大観衆に支えられたこと」
・波留敏夫さん「やればできることが分かった。チームが5位6位で3割を打つよりも優勝争いをしているチームで2割8分の打率を残す方が価値がある」
・鈴木尚典さん「気持ちで首位打者になったシーズン。来年身体が万全なら、どれだけ良い状態で戦えるか楽しみ」
・Rローズさん「アメリカでも経験していない優勝を争えた。来年こそ是非」
・駒田徳広さん「悪い時でも状況に応じて戦える、あと一歩の力がつけば、優勝できると皆が思った」
・佐伯貴弘さん「ハート。様々な勉強をした年。次に繋がる気持ちを得た年」
・谷繁元信さん「自分が打ったことより勝てた時の喜びが大きかった。スワローズと優勝争いをする中、対戦成績で勝ち越せた(14勝13敗)のは財産」
・進藤達哉さん「得たものは何か、判るのは来年。生かせるか元に戻るか、来年にかかっている」
・三浦大輔さん「チームが勝つ。その中で自分も勝つ、と思った。テンポが良くなり悪い時でも対応できるようになった」
川村丈夫さん「ルーキーの年に優勝争いの中にいられたこと」
五十嵐英樹さん「技術ではない。大観衆に支えられている気持ち」
佐々木主浩さん「チームのために野球ができた。8月は疲れていても球場に行くことが嬉しかった」
……翌1998年の日本一は必然だったという思いが占めてきます。
前を向くベイスターズの姿を楽しみに
今シーズンCSを終えた今も、きっと来シーズンへの目標に挑むエネルギーを得たと期待します。CSの3試合だけでも、躍動、粘り、機転、情熱、……今シーズンを凝縮した目に焼き付く場面を沢山見せてくれました。一方で『どれだけ悔しいだろうなあ』と思いを馳せる瞬間が多かったのも事実。
今シーズン、チーム待望のエースへと突き抜けた今永投手はシーズン終盤に木塚投手コーチと「もっと沢山のピッチャーに、壁を破って欲しい。去年4位に終わったシーズンのように他球団から見下ろされるチームになってはいけない」と話しています。ブルペンを支え続けた三嶋投手は取材を重ねる度に、表情が輝いて見えます。
第3戦終了後、戦い終えた選手の中で筒香キャプテンと石田選手会長が言葉を交わす場面も忘れられません。野手と投手、立場の違いはあっても『チームが勝つために』ポジションや役割変更に応え貢献し続け、お互いに背中を見てきました。
実況の言葉にはできなかったのですが、持てる力を振り絞った柴田選手の涙。チームの支柱筒香選手が夢に向かって日本を立った後、私の個人的意見でしかありませんが、もし柴田選手がキャプテンに抜擢されたなら、もう一段強いチームになれるかもしれないと感じました。悔しさを知り、人の気持ちを汲み、自らは逆境を跳ね返す力を持つ、チームのリーダーへと羽ばたいて欲しい選手の一人です。
今月17日ベイスターズは来シーズンへ向け練習を再開します。もう、悔しさよりも次を目指す選手たちの表情が楽しみになってきました。前を向くベイスターズの姿を、これからも、ささやかながらお伝えしていきます。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム クライマックス・シリーズ2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/14428 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。