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30年前のラーメンブーム火付け役が語る「私はこうして丼を真上から撮った」

カメラマン・飯窪敏彦さんインタビュー

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「ラーメン二郎」も登場 行列でも端の方で細々と……

――今では取材NGの大人気店も『ベスト オブ ラーメン』で取材されています。移転前のラーメン二郎・三田本店なども見られますね。

飯窪 ラーメン二郎は当時から大人気だったので、カウンターの端で撮影をさせていただいて。比較的客数が減る14時~16時の時間帯を狙ってお邪魔するようにはしていたんですが、人気店だと常に満席という状況だったりするのでやっぱり時間との勝負でしたね。

――出来立てですから、どんなに狭くてもカウンターで撮影するわけですよね。

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飯窪 やっぱりそうなりますね。当時写真学校の学生から「卒業制作にラーメンの撮影をしたいから、撮り方を教えて下さい」と言われたことがあったんです。その時に「ライトバンみたいなものを用意して、お店からラーメンを持っていって別の場所で撮っているんですか?」とか聞かれたんですが、そんなことしていたら出来立てじゃなくなってしまう(笑)。行列でも端の方をお借りして細々と撮影していました。

「慶応義塾大学御用達 ただし 女子学生皆無」今では取材NG のラーメン二郎・三田本店(移転前)

――大好きなラーメンを撮り続けて、どうでしたか?

飯窪 被写体としては変わり種なので、「飯窪はラーメンを撮り始めてダメになった」なんてことも言われたりしましたよ。でも面白い人たちと面白いことに参加できて、すごく楽しかった思い出ばかりですね。当時のラーメン屋さんは取材をあまり受けていないから、こっそり「秘伝の作り方」を教えてくれたり……。

――「秘伝の作り方」?

飯窪 秘伝なので言えないですけどね。でも「最近は若い世代がラーメン屋を継ぐために修業しに来てレシピを教えても、途中からサボったり簡単にしてしまって味がダメになっちゃう」なんて愚痴も聞きました。美味しいラーメン屋は作るのも、それを維持するのも大変ですよ。『ベスト オブ ラーメン』で紹介したお店も閉店してしまったところがあって残念です。

 

ラーメンの魅力は「自分好みの味を探すこと」

――今でもラーメンを頻繁に食べているんですか?

飯窪 築地場外にあるあっさり系の「若葉」、高円寺の老舗「太陽」は好きですね。あとは東小金井にお気に入りの店が何軒かあって、駅近くにある「宝華」や「くじら食堂」はよく行きます。自分で好みの味を探すのもラーメンの魅力だったりするんですよ。

――これからまたラーメンを100軒はどうでしょうか?

飯窪 結構大変ですねえ(笑)。よく「好きなものをたくさん食べれていいね」なんて言われたりしたんですが、1日3~4軒を限られた時間の中で回るわけですよね。撮り終えても、そのまま戻すわけにはいかないし、とは言っても全部は食べられない。ちょっと大げさに「今日は5軒目なんですよ~」と言って逃げることもありました。

 でも相変わらずラーメンは好きなので、個人的に好きなお店を探し続けたいですね。

 

写真=釜谷洋史/文藝春秋 

30年前のラーメンブーム火付け役が語る「私はこうして丼を真上から撮った」

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