「日本の宝だ」敵将も絶賛
期待以上の活躍に、中田久美・日本代表監督も「チームに合流して間もない中、疲労もあるのに流れを変えてくれた」と高く評価したが、それ以上に石川を賞賛したのが敵将のセルジョ・ブザート監督だ。
「石川は素晴らしいプレーをした。彼女はとても若いが、日本のリーダーであり、日本の宝。心からリスペクトします」
男子バレー日本代表のエース、石川祐希は実兄。
何かと兄と比較され、高校時代から試合のたびに「お兄さんからアドバイスは?」と尋ねられ、今もまだ「石川祐希の妹」と扱われることが多いが、「兄妹というだけで、それぞれ自分は自分、と思っているし、兄だから特別ということはない」と言うように、互いを1人の選手として認め合うだけで、過干渉はしない。
じつはエリートなのは妹のほう
たしかに大学在学時からイタリア、セリエAへ渡った兄のほうが先に世界へ飛び出したこともあり、知名度は高い。しかし実は学生時代のキャリアを振り返るとエリートなのは妹、真佑のほう。出身地の愛知県岡崎市から中学は越境で長野の強豪、裾花中へ進み、1年時からレギュラーとしてコートに立ち、全国優勝も経験。高校は東京の下北沢成徳高へ進学し、ここでも1年時からレギュラーの座をつかみ、ルーキーイヤーに全国制覇。アンダーカテゴリーとはいえ今夏、先に世界大会で頂点に立ったのも妹だ。
中学までは指導者の方針に従って、高さよりもスピードを活かせ、と指示され、速くて低いトスを打ってきた。当時から体の使い方に長けていて、難しいトスを限られたコースではなく、幅広く打ち分けることができたのは石川が持つ才能だ。
だが、そのスタイルのままではただ「器用な選手」というだけで終わってもおかしくない。石川の可能性をより広げたのが、下北沢成徳高で小川良樹監督が重きを置く、将来につながる基本技術と器具を使ったウェイトトレーニングや、自体重での体幹トレーニングなど、徹底した体づくり。入学時には本人が「アスリートというにはずいぶんプヨプヨしていた」という体も筋力がついて絞られ、スパイクも力強さが増した。
「木村沙織よりもしっかりしている」
速いトスでかわすテクニックではなく、高く上がったトスの落下点に合わせながら助走を取り、ブロックが揃った状況でも、最も高く、体重を乗せられる位置でボールをとらえ、しっかり打ち切る。ワールドカップでも見せた力強いスパイクは、まさに高校時代に取り組んできたトレーニングの成果である。そこにプラスして、石川が持つ長所を同校OGで元日本代表の大山加奈はこう見る。