「曺国辞任、文政権退陣」

 10月3日、保守派の怒りが爆発した。

10月3日の保守派デモ(著者提供)

 祝日だったこの日、ソウル市の中心部、光化門広場からソウル市庁、そしてソウル駅までのおよそ2キロの車道(10~12車線)は人人人の“人波”となった。光化門広場は2016年冬から2017年春にかけて朴槿恵前大統領の弾劾を要求する「ろうそくデモ」が開かれた場所。「デモは進歩派の十八番」といわれた韓国で保守派のデモがここまで参加者を集めたのは「前例がなく、歴史的な出来事」(中道系の韓国紙記者)だという。

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 光化門広場周辺の道路には地方から来たバスが列をなして止まり、人が続々と降りてくる。

 その中の2人組に声をかけると、大田から来た60代の夫婦だという。「生きていて韓国のこんな堕落した風景を見るとは思いませんでした。曺国は即刻辞任、文在寅も退陣しなければ国を建て直せない」とやや興奮ぎみ。

 開始時刻(午後1時)の30分前だったが、光化門広場はぎっしり人で埋め尽くされていて、場所がない人々はぞろぞろとソウル市庁方向に歩いていた。歩きながら声をかけたソウル在住の60代の女性は一人でやって来たと話す。

「デモは初めてです。私は保守派でも進歩派でもないのですが、今回は保守側の意見に賛成です。子供の入学については母親だったらそこまでしたい気持ちも分からなくもない。でも、他の不正疑惑がある人を法相に任命するなんて、あまりにも酷すぎると堪忍袋の緒が切れました。孫のためにも道理ある国にならないと」、そう言いながら、「それにしてもすごい人数」と感嘆した表情だった。

 大学生の息子を持つという50代の夫婦も初めてデモに参加したと話し、「検察改革はすべきでしょう。しかし、疑惑も晴れていない人物を法相にしてそれがやり遂げられますか? このまま黙っていては国の秩序が乱れてしまう。あまりの茶番の連続に我慢の限界を越えました」とやりきれなさを露わにしていた。 

集まった人数は朴前大統領弾劾の「キャンドルデモ」以上

 論争になるとして3年ほど前から警察がデモに参加した人数を発表していないため、参加者数の正確なところは分からない。ただ、羅卿ウォン自由韓国党院内代表は、「(9月28日の)瑞草洞の(進歩派の)デモが200万人なら今日のわたしたちは2000万人」と叫び、自由韓国党は300万人集ったと主張している。朴前大統領弾劾時のキャンドルデモが100万人と言われていたことを考えれば、それ以上の人数が集ったことは確かなようだが。

10月3日の保守派デモ(著者提供)

 同じ日の夕方には大学生がまた別の場所で、「曺国辞任」を訴えた。こちらには500人の学生らが集ったと報じられた。前出記者が言う。

「保守派のデモにこれだけの人数が集ったのは、瑞草洞の進歩派のデモが起爆剤になったといわれています。進歩派の主催者側が200万人と発表しましたが、あんな見え透いたウソをなぜ口にしたのか……、それだけ進歩派は今の状況に焦っているのかもしれませんが」

保守派デモの起爆剤となった出来事は?

 保守派のデモから遡ること5日前の9月28日土曜日。

 ソウル中央地方検察庁があるソウル市南にある瑞草洞で、ソウル中央地検側では進歩派が、道路を挟んだ大法院(最高裁判所)側では保守派のデモが行われた。

 当日、瑞草駅出口からは人が湧き出るように出てきていた。

「あのー、どちらですか? (曺国法相)辞任、ですか? それとも、改革(検察)ですか?」