1ページ目から読む
2/3ページ目

「絵も売りません!」」『なつぞら』名シーンの撮影秘話

――天陽が亡くなり、当面の生活のために絵を売ろうと提案する家族に靖枝が「売らない!」と涙ながらに想いを語るシーンはその週のクライマックスでもありました。撮影はどのように臨まれたんですか?

大原 朝ドラの撮影はどのシーンも、リハーサルの後はほぼ一発撮影が多いんです。この時も、ほど良い緊張感のなか、小林綾子さん(天陽の母を演じた)の「最期に家族に会いたくて、ここに帰ってきてくれたんだと思います」という台詞があって、自然と旦那さんが亡くなって、絵を売らなくちゃいけないという状況に追い込まれている靖枝に入り込めました。

 

 このシーンを撮影していて感じたのは、やっぱり靖枝は天陽君を愛している以上に、天陽くんの愛した作品が好きだったんだなということ。似ているようで少し違うその想いも大切に演じたいと思っていました。

ADVERTISEMENT

――その直後の泰樹さん(草刈正雄)との2人のシーンも印象的でした。

大原 撮影中はすごく独特な空気感でした。「天陽に会いに来た。天陽はここにおる。そのことをあんたが忘れなければ天陽はいつまでも生きていられるべ。わしの中にも天陽はおる」台詞もすごくナチュラルで、泰樹さんと靖枝がいる本当の空間を作り出せた気がします。

 

「熱い男なんです」夫婦役を演じた吉沢亮のこと

――そんな中で、もっとも共演が多かったのはやはり夫婦役の吉沢亮さんだったと思います。ですが『なつぞら』に限らず、大原さんの俳優人生のターニングポイントには吉沢さんがいらっしゃいます。初主演映画の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(以下『カノ嘘』)や、連ドラ初レギュラー『水球ヤンキース』でも共演されていますよね。

大原 本当によく共演させてもらっています(笑)。吉沢君は共演するたびに成長していて、今振り返ると最初の印象はまるで違っていたんですよね。

――最初の共演は映画『カノ嘘』ですよね。吉沢さんの第一印象はどうだったんですか?

大原 頼もしいというよりはヘニョンとしているイメージで、しっかり者という印象はなかったんですよ。あんなに容姿は美しいのに……とか思っていました(笑)。

 

――それから6年が経った、今回の『なつぞら』ではいかがでしたか?

大原 それこそ撮影中によく話していたんですが、常にお芝居のことを真面目に考えていて、俳優としてすごく尊敬できる方だなと思い直しました。

――吉沢さんはお芝居についてどんなことを話されていたんでしょう?

大原 自分はこう演じてみたいという役の方向性だったりですね。あとは他の俳優さんをすごく研究してたり、舞台もめちゃくちゃ観に行っていて。きっと昔から真面目で、だからこそこうして活躍されているんだと思うんですが、「あれ? こんなに熱い男でした?」って困惑しました(笑)。

――吉沢さんはそういう一面をあまり出されていないような気がしますね。

大原 容姿に注目が集まりやすいですが、内面の“熱さ”みたいなところもあって。とにかく友情深くて熱い人です!