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“菓子の下の金貨”関電社長が露呈した非常識な「リスクマネジメント」の言い分

彼らが本当に恐れたビジネスリスクとは何だったのか

2019/10/05

50万円のスーツは61着が費消されていた

 対応マニュアルに沿って、それぞれが阿吽の呼吸で動いていたような印象を受ける。「難しい方なので、窓口の社員を決めていた」と岩根社長は述べたが、森山氏にはきちんと対応窓口さえも設けられていた。

「個々の問題と理解しており、会社としての出資の出し入れではないと理解している」(同席した岡田達志常務執行役員)

 大切なのはマニュアルだけではない。コンプライアンスや法規制を順守するための自社ルールも必要である。岩根社長も八木会長も受領した金品は個人が保管し、返却も個人に任せていたと釈明。受領は恫喝による無理強い、受領後は個人保管、各自が返却に努めるのが独自ルールだ。

 だが、儀礼の範囲内であれば費消可能というルールもあったのか、50万円のスーツ仕立券は75着のうち61着が費消されていた。会社ぐるみ、組織ぐるみが疑われるが、「会社ぐるみではありません」と岩根社長は否定した。受取った2人では信ぴょう性に欠けるためか、岡田常務がとどめの発言をした。

「金貨、金品の出所がどこにあるかまったく承知しておりません」

金品受領問題での記者会見中に言葉を交わす関電の八木会長(左)と岩根社長 ©時事通信社

「出資元については考えが及びつかなかった」

 これも独自ルールの1つになる。出資元については確認しない、探らない。岩根社長も「出資元については考えが及びつかなかった」と釈明した。八木会長は「森山氏に関係する企業の問題は全然見えていない」と、森山氏への対応と関連企業への発注の2つは別問題と、両手で上下を区切るような仕草をした。知れば違法、違法の認識があれば罪に問われることになりかねず、処分しなければならなくなる。そうすればすべてが表沙汰になる。ビジネスリスクの発生を阻止するため、違法性が疑われる事象には目を瞑るという独自ルールが用いられた。

「我々がしっかり頑張って、日本の未来のエネルギー、未来の原子力を支えていきたいという、そういう気持ちをもっておりまして」(岩根社長)

 すべては日本の未来と原子力のためという使命感が、関電幹部にはあったのだろう。だからこそ、悪や違法性があっても目をつむり己の行動を正義にすり替えていった。その結果、原子力事業が進められた現状を鑑みると、ビジネスリスクの回避はとりあえず成功。経営幹部らが辞任する必要はないと考えてもおかしくはない。

 関電幹部らが一貫して行ってきたのは、実は隠蔽のためのリスクマネジメントだったということだ。

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