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我々と重ね合わせてしまう、ホアキン・フェニックス

 そして、ホアキン・フェニックス。これまでの3人にはなかった、彼のジョーカーにしかない“あるもの”とはなにか。それは“共感”である。

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

 歴代ジョーカーは絶対に理解できない狂気と悪意を宿していたが、今回のジョーカーことアーサーはあくまで市井の人でもある。誰かに認めてもらいたい、愛されたいと頑張っているのに、そんな彼の願いに“共感”しない冷たい社会によってことごとく無に帰す。たとえ心の病や脳の障害に“共通項”は見出だせなくても、器用に生きられない、常になにかに阻まれている姿には自分との“共感項”を見出して重ねてしまう。そこが刺さってくるし、悪へとひた走る彼を咎める気がまったく起きない自分にドキリと恐怖してしまうのだ。観客の心情と同期させてしまうこれまでにないジョーカー像を打ち立てることは、演技派としての大きな挑戦だったはずだ。

監督のトッド・フィリップス(左)とホアキン・フェニックス (C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

 ロサンゼルス市警と陸軍が銃乱射事件などを引き起こす原因になるのではないかと作品を警戒したが、こんなニュースを生んだのもホアキンの熱演があったからこそ。アカデミー賞助演男優賞に1度、主演男優賞に2度ノミネートされているものの無冠だったホアキン。だが、来年の授賞式ではオスカー像を手に耳をつんざくような笑い声を挙げているに違いない。

INFORMATION

『ジョーカー』
10月4日(金) 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved   TM & (C) DC Comics
http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/