共学化する「台所事情」
理由の一つには1999年に施行された男女共同参画社会基本法がある。しかしそれだけではなさそうなのだ。東日本で比較的近年共学化した学校のリストを見ると、その多くが過疎化した地域の学校であることがわかる。つまり男女共同参画社会の実現という理屈を盾にしながら、実は過疎化・少子化による学校運営上の事情もあることがわかるのだ。
同じことが、私学についてもいえる。急速な少子化のなかで、中堅以下の女子校は生徒募集に関して非常に厳しい状況にある。特に高校からの生徒集めが苦しい。しかし共学化した学校では一時的にではあるが志願者数が増えるのだ。
つまり高校しかない女子校は共学化に踏み切るか、中学校を設置して別学を継続するかの選択を迫られる。女子中高一貫校は高校募集を停止し別学を継続するか、共学にするかを迫られる。
共学化に合わせて大胆なリニューアルをしたのが、順心女子を前身とする広尾学園、東横学園を前身とする東京都市大学等々力、戸板女子を前身とする三田国際などである。校名を変え制服を変え校舎を改装し、まったく新しい学校として生まれ変わった。「共学リニューアル校」とも呼ばれ存在感を増している。
一方、都内高校受験で私立女子トップ校の一つとされる豊島岡は、2022年度入試から高校での募集を停止すると発表した。中学入試で十分に優秀な生徒を集められるからだ。
公立であっても私学であっても、学校の運営や経営ありきの共学化というケースが実際は多くあるわけだ。その選択自体は否定されるべきではない。
しかしそこで、「男女共同参画社会では共学であることがあたりまえ」や「学校は社会の縮図であるから、学校の中にも男女がいるべき」と言われれば、「ちょっと待ってほしい」となる。