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「なぜ女子校の運動会は『学年対抗』形式が多い?」 半減した女子校の存在意義を再考する

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海外の研究結果「女子校のほうがジェンダーにとらわれない」

 海外での調査によれば、男女別学校のほうがむしろジェンダー・フリーである、つまり男女の性的役割についての既成概念にとらわれにくい環境であるという研究結果がある。

 2002年には、イギリスの国立教育調査財団が計2954もの高校を調査した結果、女子校の生徒ほど、高等数学や物理など、一般的には女性的ではないと見なされがちな教科を選択する確率が高いことがわかった。調査に関わった研究者たちは、「女子校では、女性らしい教科や男性らしい教科という固定概念にとらわれにくい」と結論づけている。

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 その裏付けといってもいいだろう。2005年、イギリスのケンブリッジ大学は教育における性差に関する研究調査の結果を発表した。男女の学力差を埋めつつ男女それぞれの学力を上げるための教育施策を模索するなか、たどりついた結論の一つに男女別学化があった。

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 男女別学化することで、男子生徒は英語や外国語で、女子生徒は数学と科学で、それぞれ明らかな効果が見られたのだ。一般に、男子は語学が苦手、女子は理数系が苦手というのが世界共通の傾向である。しかし、その常識を打ち破るヒントが男女別学教育にあるらしいことがわかった。

 なぜこのようなことが起こるのか。「学校は社会の縮図であるべき」という思想のなかにそもそもの矛盾がある。

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 学校が社会の縮図であるとすれば、現在の社会にある「男女不平等な既成概念」がそのまま学校という空間にも持ち込まれる可能性が高い。既成の性的役割に照らし合わせ、女性は女性らしく、男性は男性らしくあれという暗黙のメッセージが教室に入り込む。「男性は理数系が得意で、女性は語学や芸術系が得意である」という固定概念が、生徒たちの志向に「ジェンダー・バイアス」をかけるのだ。

 これは「共学のパラドクス」である。その点、女子校や男子校には性差がない。よって日常生活のなかにジェンダー・バイアスが入り込む余地もない。ジェンダーに対する意識が急速に高まっている現在の社会において、ジェンダー・ギャップを乗り越える環境としての女子校の存在意義は、もっと前向きに見直されてもいいのではないだろうか。

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