なぜ女子校の運動会は「学年対抗」形式が多いのか?
奇妙だと思って、複数の女子校でその理由を聞いてまわった。「ずっと前からそうなので……」という答えが多かったが、いくつかの学校では、「かつて縦割りにしたこともあったのですが、生徒たちからたいへん不評で、学年対抗に戻した経緯があります。彼女たちは勝つことよりも自分たちのチームをつくること自体にやりがいを感じるようで、よって先輩たちから指図されるのもあまり面白くないと言っていました」という主旨の証言が得られた。
ケンブリッジ大学心理学・精神医学教授のサイモン・バロン=コーエン氏は、『共感する女脳、システム化する男脳』(NHK出版)という本を著している。そのタイトル通り、女性の脳は共感する能力に長けている傾向があるというのだ。それが本当だとするならば、ある仮説が成り立つ。
男子の場合、命令系統がはっきりしているトップダウン型の組織を好む傾向がある。いっぽう女子の場合、横のつながりを大事にする。お互いに支え合いながらゆるやかな組織を形成していくのが得意だ、と言えそうだ。言い換えれば、男子の組織では「命令」が、そして女子の組織では「共感」が重要な役割を果たす。だから、少なからぬ女子校において、学年対抗で運動会を行うようになったのではないか。
いずれにしても、集団としてみた場合、女子と男子ではそのふるまいが大きく異なることが、運動会における組織づくりに如実に表れているのである。共学校にはない、女子校ならではの空気があるのだ。
女子校がピークの半分以下に
しかしいま、全国の高校のうち、生徒が女子のみの学校の割合は約6.1%。男子のみの学校の2.2%に比べればましではあるが、希少な存在であることに変わりはない。女子のみの学校の数は1970年代がピーク、その後減り続け、現在はピークのほぼ半分以下になっているのだ(表)。いまなぜ女子校が減っているのか。