俳優・三浦春馬さん(享年30)の衝撃的な自死から10日余りが経つが、その悲しみはまだ癒えることなく日本中を覆っている。

 7歳で芸能界入りし、すぐに天才子役として有名になった三浦さん。30歳で亡くなるまで「恋空」「クローズZERO」「永遠の0」「進撃の巨人」などの大ヒット映画や、ドラマ「ごくせん」(日本テレビ系)などの話題作に出演し、人気俳優としての地位を着実に築いていた。亡くなった後に「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で公開された新曲「Night Diver」のPVでみせたその繊細な歌声と巧みなダンスへは、驚きと称賛の声が集まった。

©文藝春秋

 そんな三浦さんの死に際し、「なぜ」という疑問を抱く人は多かったのではないだろうか。多くの俳優や仕事仲間、ファンから愛されていたのに、類い希なる才能に恵まれ、アーティストとして大成功していたのに……なぜ?

ADVERTISEMENT

 そんな疑問に対し「芸能人という特殊な職業は、孤独に陥りやすい条件が揃っている」と分析するのは、明星大学心理学部心理学科准教授で、臨床心理士の藤井靖氏だ。藤井氏は複数の芸能事務所と契約し、実際に芸能人のカウンセリングも担当しているという。芸能人が陥る孤独は、私たち一般人のそれとはどのように違うのだろうか。

◆ ◆ ◆

とりわけ特殊な芸能人の心の問題

「自殺に結びつきやすい精神疾患というと、うつ病や統合失調症、依存症、パーソナリティ障害などがあります。しかし三浦さんに関していえば、報道やインタビューなどを見ている限りでは診断名がつくような疾患を抱えていた可能性は限りなく低いのではないか、という印象を受けました。

 私は精神疾患や障害など診断名がつく方だけではなく、不登校やいじめ、引きこもりなど診断名がつかないけれども心に深い悩みを持っている方をカウンセリングしています。私は複数の芸能人の方のカウンセリングも担当してしますが、不調を訴える芸能人の方の多くも、その“診断名がつかない”というカテゴリーに含まれることが多い。診断名がつかない方が抱える心の問題は人それぞれですが、芸能人をはじめ著名人の方の問題はとりわけ特殊です」(藤井氏、以下同)