「『ウソの笑顔』を作り、毎日ウソをつくのが苦痛だった」
三浦春馬さんは7月18日、港区の自宅マンションで首を吊っているのがマネジャーによって発見され、その後死亡が確認された。前日は普段通りにドラマ撮影をこなし、当日も同じ現場に入る予定だったという。
「芸能人は好きなことを仕事にして、ファンがいて、お金をたくさん稼いでいて、傍からだとキラキラして見えます。しかし内心には、深い『精神的孤独』を抱えていることが多いのです。
孤独というと、一般的には他人との社会的な関わりが断絶され、ひとりぼっちでいる状態を想像すると思いますが、これは『物理的孤独』といいます。そしてこういう状態であっても、精神的に充足している人は少なからずいる。一方、『精神的孤独』は周囲に人がたくさんいて多くの人に愛されていても、心が孤独を感じること。周囲が気づかないことも多く、知らない間に当人は孤独から心を病んでしまうことがあるんです」
「週刊文春」8月6日号では、三浦さんが遺した日記の一部が報じられている。そこには《僕の人間性を全否定するような出来事があり、たちまち鬱状態に陥り、自暴自棄になった》《仲の良い人に会うときに「死にたい」と思っていることを悟られたくなかった。「ウソの笑顔」を作り、毎日ウソをつくのが苦痛だった》などと綴られている。
誰にも相談できない「精神的孤独」
藤井氏は、三浦さんの自殺の理由を「報道などから推測するしかありませんが」と前置きしたうえで、「芸能人はその職業の特殊性から精神的孤独に陥りやすい」と説明する。
「私の患者さんには女優のAさんという方がいらっしゃいます。初めて私の元へいらっしゃったとき、彼女も深い精神的孤独に陥っていました。彼女は名前の知られた人気女優ですが、『啓蒙のためになるなら』とAさんのケースをお話しする許可をご本人と事務所からいただきました。なお通常、カウンセリングには厳格な守秘義務が課せられていますので、本人に許可なくお話しすることは絶対にありません」
女優であるAさんが藤井氏を訪ねたのは、常備薬をひと瓶飲んで自殺を図り、仕事に穴を空けてしまったことがきっかけだったという。
「Aさんはそれまで悩みを誰にも明かさず、自分だけで抱え込んでいました。しかし仕事を休んだことで事務所から問い詰められ、その時に初めて気落ちや不眠、食欲不振に悩んでいることを打ち明けたそうです。そこで初めてマネジャーが彼女の苦悩に気がつき、カウンセリングが必要だ、となったのです」
当時、Aさんは恋人との結婚を事務所に反対されていた。
「しかし、Aさんに相談ができる人はいませんでした。地方出身の彼女は都内で一人暮らしをしていて、地元の友人とは物理的距離があった。それに『事務所に結婚を反対される』ことは芸能界ではよくあることかもしれませんが、一般的な悩みではないので、業界外の友人には相談しにくい。もちろん、事務所から結婚を反対されていたのでマネジャーに相談することはできませんでした。芸能人仲間にも言えなかったそうです」