税制のゆがみを正せ
私が「節税」を唱えたのは、国税当局の人間ではありましたが、「税金は取れるだけ取ればいい。多ければ多いほどいい」とは考えていなかったからなのです。
重要なのは、税制の大原則である「公平・中立・簡素」、そして負担能力に応じて納税する「応能負担原理」、これにのっとって税を納め、国と社会に貢献することです。
そのためには大本である税制が大原則から外れることがあってはいけません。税の現場から大学での研究に転じて以降も、税制はどうあるべきかを生涯のテーマにしてきました。
ところが近年の税制の動向をみると、政治が不当に介入してきたことにより、大原則に反する改定や財源あさりなど異常なことが少なからず見うけられます。
その最たるものが消費税の導入であり、その税率の引き上げです。それに大企業優遇という不公平も一向に是正されないどころか、安倍政権下では、それに拍車がかかっています。また税制や国際課税ルールがグローバル化したビジネスモデルに追いついていないため、国際的な課税逃れが横行し、その結果、富の再配分機能といった税の社会的な機能が損なわれています。
戦後税制とともに生きてきた私には、このような状況を看過するわけにはいきません。税制のゆがみは、私の人生がゆがめられているようなものであり、それには耐えられないのです。そうした思いから、この本を書きました。
本書が、日本の税制をただすための起爆剤となり、さらには日本活性化の導火線となれば、それに勝る喜びはありません。