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日本批判は「アメリカ離れ」するため

 いま日本との関係が緊迫しているのは、もちろん安倍晋三首相が日本国内の政治に利用している面もあるでしょうし、日本人が右傾化しているという問題があることも知っています。ですから、日本にも責任の一部はあるのでしょうが、文在寅政権の問題の方がより大きいと思います。

 文在寅政権は、北朝鮮と連携することを目的とした異常な政府です。つまり、日本との関係を悪化させているのも、北朝鮮との関係のためです。

 どういうことかと言えば、韓日関係の先にある、韓米同盟を破棄するための“渡り石”として韓日関係の悪化を利用しているに過ぎない。自由民主主義に基づいた歴代政権を否定し、韓国を“北朝鮮化”したい文政権にとって、最終的にアメリカが邪魔になるからです。

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 ただ一方では、いまやアメリカの姿勢も変化してきています。トランプ大統領は北朝鮮の短距離ミサイル発射について容認する姿勢をみせている。韓国とアメリカは、日本とアメリカと同様に相互防衛条約を結んでいるにもかかわらず、です。

©文藝春秋

 事を日本に置き換えて考えてみてください。仮に、東京周辺にミサイルが飛ばされることを、アメリカが容認するような事態になれば、日本国内で防衛条約上の大問題になるでしょう。憲法9条を変えなくてはいけないし、核武装も検討されるかもしれない。いま韓国では、この事態が現実のものとして起こっているのです。

 韓国はこれまでも、朝鮮戦争、ベトナム戦争をはじめとしたアメリカの対外政策の影響を大きく受けてきましたが、孤立主義へ回帰するアメリカの方針転換は、これらと並ぶ歴史的な事件です。

 トランプのアメリカの孤立主義と、文在寅大統領の「南北関係」優先主義。この出会いが北東アジアの安定を揺さぶっている原因なのです。

「徴用工」も「慰安婦」も韓国政府に不満を言うべき

 日本との歴史問題について私が問題視するのは、文在寅大統領が、反日感情を巻き起こすことで、「政治的利益」を得ようとしていることです。

ソウルの日本大使館前の慰安婦像 ©文藝春秋

 徴用工問題について言えば、1965年の韓日基本条約で賠償は整理されています。当初、日本側は元徴用工に対して個別的に支払うと主張したにもかかわらず、当時の朴正煕政府がこれを拒みました。朴正熙は一括でもらい受けた賠償金で、浦項製鉄(POSCO)を作り、ソウルから釜山まで京釜高速道路を敷いて、その後の「漢江の奇跡」と呼ばれる経済的急成長につなげたのです。この時点で徴用工問題は解決済みでした。盧武鉉政権でこの問題について再調査がされたときでさえ、日本の賠償の責任はないと結果が出ているのです。