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 さらに今年の6月6日、朝鮮戦争の戦死者を追悼するために始まった「顕忠日」という記念日の発言もありました。北朝鮮で労働相や最高人民会議代議員などの要職を歴任し、朝鮮戦争時に南進し、韓国侵略を主導した金元鳳(キム・ウォンボン)の名前を挙げて、彼こそが韓国軍のルーツだと宣言したのです。

 これらの発言でも分かるように、文在寅は社会主義を目指した曺国と、韓国を破壊し、共産主義国家をつくろうとしているわけです。つまり、曺国が「枝」なら、それを操っているのが文在寅という「木」の幹です。そして、さらに辿ると「根元」に金正恩がいる。

10月3日の「反・文在寅」デモは、韓国の保守系の集会としては過去最大規模となった ©文藝春秋

なぜ異常な大統領が選ばれてしまったのか

 そんな文在寅がどうして大統領に選ばれたのか。日本の皆さんはそれが不思議でならないと思います。

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 韓国では、1980年代に学生運動がありました。そのなかで、金日成主義を讃美する「主体思想」と呼ばれるイデオロギーが盛り上がりました。その後1990年代、韓国の民主化が進むと、学生運動家たちは「民主化人士」と呼ばれ、社会の様々な領域に散らばっていったのです。いま、この世代が韓国社会のなかで権力を持つ世代になっています。

 イタリア共産党の創始者にアントニオ・グラムシという思想家がいます。彼の理論には「陣地戦」という、時間をかけて社会のなかで革命戦士が散らばって「陣地」をつくり、決定的な瞬間に集合して一挙に革命を実現するという考えがあります。ヨーロッパでは失敗した理論でしたが、韓国では散らばっていた民主化人士が2016年の朴槿恵事件で一挙に結集し、革命を成功させてしまったのです。

 その意味で、大韓民国はまさにいま、戦後、いや建国以来の歴史的大転換点に直面しています。