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文政権の保守分裂のための「切り札」とは

 そんな中、文政権には保守の団結を阻止する“切り札”があります。政界でまことしやかに語られている、選挙直前の「朴槿恵釈放」というカードです。

 刑が確定した後に朴槿恵を釈放すれば、保守派は混乱状態に陥る。これまで釈放を主張していた“朴槿恵信者”は勢いを増します。一方で、弾劾に強く反対しない者も多かった現在の最大野党・自由韓国党の議員は厳しい立場に追いやられます。いま自由韓国党の代表を務める黄教安(ファン・ギョアン)などは、朴槿恵政権下で首相にまでしてもらいながら、弾劾問題では今尚あいまいな立場ですから、保守派の中でも様々な思いがあるのです。

 韓国の保守派は、曺国の辞任では団結できて「1勝」をあげたのに、政権奪還に向けての野党保守勢力の統合とは簡単にはいかないのです。

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保守派としては史上最大の市民集会となった10月3日の反・文在寅デモ ©文藝春秋

 そんな政治状況の中で、対日関係はどうなるのでしょうか。いまの文政権内には、対米関係が膠着していることもあり、日本とこれ以上喧嘩できないという雰囲気はあります。

 曺国を辞任に追い込んだ野党保守勢力は、デモの会場でも「文在寅は反日運動を求心力拡大に使っている」「反日扇動に騙されるな」というスローガンを打ち出しています。したがって今後、文政権から新たに民心を刺激するような反日政策がでてくると、保守勢力に批判する材料を与えるようなものです。
 
 文在寅としては、反日カードがマイナスになる環境になりつつあります。今回の曺国辞任は、文在寅の反日政策を留保ないし一歩後退させる効果はあるかもしれません。