議員内閣制の日本と違って、大統領制の韓国では、権力集中度が高いだけに権力の「水漏れ」を恐れます。一旦穴が空くと、一気に政権が崩れてしまう。だからこそ、曺国を辞任させずに来たのでしょうが、いよいよそれも難しいと感じたと思います。
文大統領は、テレビを中心としたメディアを掌握し、政権内部の左翼勢力による謀略を含めた民心掌握術にも優れたものがありました。それらに頼って、政権の支持基盤を過信していた部分もあったのでしょう。
保守勢力を悩ます「朴槿恵」の存在
あれだけスキャンダルが報じられながら、曺国の法相指名を強行したわけですから、文在寅大統領の責任は大きい。今後は、野党である保守政党が、大統領に曺国法相の任命責任を追及していくことになるでしょう。
今後の文政権の行方は、保守政党がいかに勢力を拡大できるかがカギを握っています。しかし、「反・文在寅」デモは盛り上がっても、保守勢力が一枚岩にまとまっていないのが実情です。
いま政権与党がまだ安心していられるのは、このあたりに理由があります。保守派のデモに行くと分かりますが、多様な人が様々な旗を立てて、いくつもある舞台で勝手な演説をしている。「政権支持派」のように、一つの舞台で一枚岩になって、参加者で一斉にウェーブをやるような集会とは違うのです。
いま保守がまとまりきれない最大の理由は「朴槿恵問題」にあります。実は、保守政党は「朴槿恵をどう評価するか」で意見が対立しているのです。端的に言えば、朴槿恵の弾劾に賛成したか否かで、立ち位置が分かれているのです。保守派、当時の与党の中にも、当時の世論に抗せずに弾劾に賛成した勢力があったからこそ、朴槿恵政権は崩れました。彼らを「裏切り者」とする勢力がまだいるのです。
いま人気を集めている保守勢力は「朴槿恵釈放」を求めています。集会でも「朴槿恵待望論」を主張するグループがいます。
曺国辞任を契機に、自分たちの過去を水に流して「政権奪還に向けて未来志向で団結しよう」となれば、文政権にとって脅威です。しかし、特に来年の総選挙に向けて小選挙区の野党候補一人化も、まだ進められていません。