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2019/10/15

genre : ニュース, 国際

検察改革法案が辞任の伏線だった

「もともと『11月辞任説』がまことしやかに流れていました」と話すのは、冒頭の記者だ。

「辞任前に発表した検察改革法案は辞任の伏線と見られていました。検察改革の“絵”をある程度自身が示して改革を推し進める道筋をつけたことをアピールし、自身の疑惑ではない家族の疑惑で身を引くというシナリオ。こうした流れは辞任前にメディアに送られた辞任発表文からも十分読み取れます。11月辞任で動いていたのが、世論調査結果で前倒しになったのではないかというのがもっぱらの見方です」

ソウル近郊の法務省庁舎で発言する韓国のチョ・グク前法相 ©時事通信社

 曺国法相は辞任発表で「検察改革の種火は作った」とし、「私の役割はここまで」と語った。文大統領は、「結果的に国民に大きな葛藤をもたらした」と謝罪したが、「今日(14日)曺国法相が発表した検察改革法案は歴代政府に長い間要求されてきたものでしたが、誰も成し遂げられなかった検察改革への大きな一歩を踏み出した」と曺国法相を検察改革に着手した長として評価した。

曺国本人がシロとなれば人気はさらに上昇する

 文大統領が泣くのは分かるが、では、なぜ辞任した曺国法相が“笑える”のか。

 前出記者が言う。

「文大統領は謝罪しましたが、曺国法相任命によりすでに始まっていたレームダックがさらに加速するのは必至とみられます。ただ、支持率は落ちたとはいえ歴代大統領の中では高いほうで、進歩派内では検察改革を進めながら低空飛行を続ければいいという見方。目下、政界の最大関心事は総選挙であり、次期大統領選挙です。

 曺国法相は辞任表明文で家族について触れましたが、これに同情が集っていて、進歩派内での人気はすさまじい。進歩派は検察の捜査で曺国法相本人がシロとなれば人気はさらに上昇すると踏んでいます。『権力を自ら手放した男』、『家族思い』といった面が格好のアピールとなり、総選挙でも次期大統領選挙でも進歩派に有利な状況を導くと考えているのです。

 現在、次期大統領候補1位となっている李洛淵首相は進歩派のコア層に近いわけでもなく、また、李首相で勝てるかどうか進歩派は不安を持っている。かといって他にめぼしい候補者がいない状況で、曺国人気を生かさない手はない。

 今回の(曺国法相の)辞任は本人にとっても進歩勢力にとっても悪い選択ではありません」