10月14日14時、曺国法相が電撃的に辞任を発表した。

 就任から35日目、検察改革法案を自ら発表してからわずか3時間後のことだった。

 しかし、「文在寅大統領が泣き、曺国法相が笑った」という意外な声も聞こえてくる。

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2週間前から辞任を希望していた

 辞任の背景を巡ってはさまざまな憶測が飛んでいる。中道系の韓国紙記者が言う。

「与党関係者によれば、2週間ほど前から曺国法相本人が辞意を表明をしていて、その決心は固く、青瓦台(大統領府)とも話し合いを続けてきたといいます。辞任発表のタイミングは曺国法相が決断すると言っていたそうなのですが……」

 一連の事態を巻き起こした曺国法相の家族を巡る疑惑については周知のとおりで、現在、焦点となっているのは、娘の大学院不正入学疑惑と私募ファンドへの不正投資疑惑の2つ。

自宅を出る曺国前法相 ©時事通信社

 不正入学疑惑を巡っては、曺国法相の妻・チョン・ギョンシム東洋大教授が娘への表彰状を偽造した「私文書偽造」の疑いで在宅起訴されており、私募ファンドへの関わりなどでも14日、検察で5回目となる取り調べを受けていた。また、この私募ファンドをめぐっては曺国前法相の弟も取り調べを受けており、検察は裁判所に逮捕状を請求したが棄却された。棄却されたことについては現在開かれている国政監査で野党から激しい追及が続いている。 

世論調査で与党に衝撃が

 そんな中、辞任の背景のひとつに挙げられているのが、14日に発表された世論調査(世論調査会社「リアルメーター」)結果だ。

 10月7日~8日、10日~11日(9日は祝日だったため除外されている)に行われたもので、この調査で文在寅大統領の支持率は先週から3ポイント下落し、就任後最低の41.4%を記録。さらには、与党「共に民主党」の支持率も3ポイント下落し35.3%となり、第一野党の「自由韓国党」の支持率34.4%(+1.2ポイント)と拮抗状態となった。

「自由韓国党」のこの支持率は文政権になってからは最高値。しかも、日にち別では、11日金曜日には、「共に民主党」の支持率33.0%を「自由韓国党」が34.7%と文政権になってから初めて与野党が逆転した。

 別の記者(中道系紙)は言う。

「この結果を知った進歩派には衝撃が走ったそうです。これでは来年4月の総選挙も2022年5月の大統領選挙も危ういという危機感がピークに達した。もはや持ちこたえられないと判断したのでしょう。夫人への逮捕状請求も迫っているともいわれていて、傷が浅いうちに、また、この世論調査結果もうやむやにするためにも、曺国法相辞任で目くらましを図ったという見方も出ています」