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 たとえば昨年のドラフトで1位指名された根尾昂(中日)は小学時代にドラゴンズジュニアに選ばれ、中学3年次にはNOMOジャパンのエースとして国際試合を戦った。同じく藤原恭大(千葉ロッテ)もオリックスジュニアを経験し、中学に進学する際には中学硬式野球の数十チームから声がかかったという。

 根尾や藤原のような野球エリートを全国から受け入れ、高校野球に一時代を築いてきたのが大阪桐蔭だ。同校はここ数年、U−15侍ジャパンやボーイズ日本代表、あるいはNOMOジャパンなど、日本代表歴を持つような有望選手を数多く抱え、昨年は史上初となる二度目の春夏連覇を達成した。

 ところが今春の選抜、今夏の選手権大会と大阪桐蔭は出場を逃す。かわりに全国屈指の大阪を制し、この夏の甲子園で初めて深紅の優勝旗を手にしたのが、履正社だった。寮のない履正社を選ぶのは自宅から通える大阪近郊の球児が中心となるが、中学時代の輝かしい実績を持つ有望選手が居並ぶのは大阪桐蔭と同様である。

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 いわば野球エリートに選ばれるヒエラルキー上位校が、大阪桐蔭や履正社であり、関東ではそれが東海大相模や横浜(共に神奈川)、日大三(西東京)だ。これはそのままプロ野球選手輩出学校ランキングの上位に相当する。

 プロ野球12球団のジュニアチーム→U−12侍ジャパン(カル・リプケン世界少年野球大会代表)→U−15侍ジャパン(ボーイズ日本代表、NOMOジャパン)→野球強豪校→プロ。こうした経歴こそ、まさしくプロへの常道となっている。

軟式野球出身者が活躍中

 そして、今年のドラフトで上位指名が予想される選手の中で、華々しいエリート街道を歩んできている選手が、春の選抜を制した東邦(愛知)の石川昂弥と、創志学園(岡山)の豪腕・西純矢、そして横浜(神奈川)の及川雅貴、興南(沖縄)の宮城大弥という両左腕である。

U18侍ジャパン一次候補合宿後のインタビュー。左から星稜・奥川恭伸、大船渡・佐々木朗希、東邦・石川昴弥 ©時事通信社

 選抜優勝投手の石川は、野手としてプロの世界に挑むが、彼は根尾と同じドラゴンズジュニア出身で、中学時代はやはり根尾と同じNOMOジャパンに選出された。石川の地元球団である中日は昨年の根尾に続く二匹目のドジョウを狙っているかもしれない。さらに甲子園での“咆哮”投球が記憶に残る西も、NOMOジャパンを経験した一人だ。

 及川と宮城は16年のU−15侍ジャパンの一員で、宮城は西とともに今年8月末から韓国で開催されたU−18野球W杯でも侍ジャパンに選ばれ、大車輪の活躍を見せた。今年のドラフトでは、佐々木と奥川に、森下暢仁(明治大)を加えた3人に指名が集中することが予想されるが、十分に“外れ1位”の可能性もある。

 中学時代の代表歴が甲子園中継でも紹介されるようになり、野球エリートたちが一部の強豪私立に一極集中する傾向は今後より強くなっていくに違いない。