だが、中学硬式野球で華々しい実績を持つ球児が、プロへ行っても大成するとは限らないから難しい。今年のプロ野球の開幕投手を務めた12人の投手のうち、外国人(メッセンジャー)1人を除く実に11人が中学時代は軟式野球出身だったという面白いデータもある。ちなみに、昨夏の甲子園で“カナノウ”フィーバーを巻き起こした吉田輝星(金足農業→北海道日本ハム)も地元の中学で軟式野球に励んだ。
前述したように、佐々木も奥川も軟式出身。ふたりに指名が集中すれば、高卒ドラ1の常識が覆される可能性だってある。
また奥川を育んだ星稜や、宮城の仙台育英のように、付属中学(軟式)からの6カ年計画で甲子園を目指すような私立の躍進も見逃せない。
身体の出来上がっていない中学生の時期は軟式で身体をいたわりながら励み、高校に舞台を移してから重たい硬式球を手にする。来春の選抜から球数制限が導入され、球児の健康を第一に考える時代に高校野球は突入する。強豪野球部の作り方もより多様化し、エースを酷使するような古き体質のやり方は批判され、淘汰されていくだろう。部長や監督の暴言や暴力行為が表沙汰となった横浜の問題も、高校野球が新たな時代を迎えた象徴のような出来事な気がしてならない。
“ガラスのエース”の行方は
高校野球が新時代を迎える中、エリートが集まる名門私立ではなく、地方から甲子園の頂点を目指すような強豪野球部でもない岩手の大船渡から、163キロの直球を投じる怪物が生まれたのは、奇跡的な出来事ではある。
今夏の岩手大会決勝で佐々木は、故障の懸念によって登板を回避され、自身初の大舞台となるU−18野球W杯でも、血マメの影響でわずか1イニング、19球を投じただけで終わってしまった。
高校野球を不完全燃焼で終えたガラスのエースがどんな野球人生を歩んでいくのか。まずは運命の日の指名結果を待ちたい。
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