ポイントは「挿入にこだわらない」こと
「中高年の充実した性生活」にとってのポイントの一つは、「挿入にこだわらない」ことであるようだ。
「一般に、セックスは『挿入ありき』と考えられています。とくに中高年夫婦の場合、夫の男性機能の低下などにより、挿入が困難なカップルもあるでしょう。歳を重ねるにつれ、体調や病気、性交痛などで、挿入や射精が難しくなる現実もあります。
私が相談を受けた男性の中には、『もう妻とはできないんだ』とボロボロ泣き出してしまった脳卒中後遺症の方もいらっしゃいました。実際、勃起不全になると、セックスどころか、触れ合うこと自体を放棄してしまう男性が多くいます。
しかし、挿入がなくても、心と心を通わせたセクシュアル・コンタクトも、立派な『性生活』です。セクシュアル・コンタクトとは、キス、ペッティング、オーラルセックス、裸で一緒に寝ることなどが挙げられますが、これらは挿入に関係なく、お互いの気持ちが通っていればできる性的な行為です。挿入が困難でも、肌と肌の触れ合いなら、毎日の生活の中に取り入れられ、それこそ臨終のときまで続けることができます。
とくに女性の場合は、挿入がなくとも愛撫だけでオーガズムに至ることは可能です。愛撫で女性を喜ばせることができれば、挿入や射精ができなくても、男性としての達成感を得ることは十分にできるのです。
セックスレスで悩んでいるのであれば、『どうやってセックスを行なうか?』を考えるのではなく、まずは1日1回でも、心が安らぐような肌と肌の触れ合う機会を探った方がいいでしょう。『挿入にこだわらない』は、『中高年の性生活』にとって極めて重要です」
「中高年の性生活」の充実を呼びかける荒木乳根子氏の「中高年『新しい性生活』のすすめ」の全文は「文藝春秋」11月号に掲載されている。