厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。
今回のテーマは性器の美容形成。アメリカの富裕層に浸透している「美容背形成」がセックスの価値観を変えていく。
※「週刊文春」2012年10月4日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。
医学の進歩によって可能になった”性の整形手術”
取材中、突然頭に蘇ったのは、子供の時に見たアニメ『銀河鉄道999』のセリフだった。
「機械の体を手に入れるんだ」と、鉄郎少年は言って、メーテルと宇宙に旅立つのだが、まさか自分が中年になって「あなたの性器の長さ、勃起角度、大きさを変えられます」と言われる時代が到来するとは想像もしなかった。
現在、美容外科の世界では男性も女性も性器そのものの形を半導体レーザーなど様々な機械を使って変えられるまで進化している。
しかし、人はなぜ性器の形を変えようとするのだろうか。形を変えた先に何が待ち受けているのか。
固さや締まり具合は女性自身の性的意欲に影響する
2011年12月、横浜元町女性医療クリニックLUNAの関口由紀理事長は、アメリカのビバリーヒルズへと研修に向かった。彼女に手術の手ほどきをするのは、ドクター・マトロック。ヴァギナの美容整形で世界的に有名な黒人医師である。マトロック氏は、ハリウッドのスター、石油王や政治家の妻たち、海外高官からロイヤルファミリーまで、23年間で世界63カ国の延べ5700人のヴァギナにメスを入れてきた。
彼が関口氏にトレーニングしたのが、半導体レーザーメスを使ったレーザータイトニング(女性器若返り術)と、レーザーデザイニング(美容女性器形成術)である。関口氏が話す。
「タイトニングの対象者は、日本では今まで『子供を2人産んだのだから、これくらい膣が緩んでも仕方がないよ』と言われてきた女性です。膣の後壁と前壁を縫い縮めることをタイトニングと言い、日本でも昔からある手術でしたが、電気メスで手術をした場合、傷の周りの収縮性が失われ、固くなるのです。
でも、レーザーを使うと、傷跡が本当にきれい。触った感触も自然なヒダと同じで、でこぼこしていない。瘢痕(あばたのような凹み)がなく、固くないし、締まった感じになるんです」
固さや締まり具合は男性の快感に影響すると思われがちだが、実は女性の性的意欲に影響する。
ある30代前半の女性は出産して2年ほどたつと、性欲がムクムクとわき出した。授乳期間を終えると、ヒトは性欲が蘇るのだが、復活した夫との性生活に快感がなくなっていた。