厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。
今回のテーマは、変化するセックスの価値観。なぜ人はここまでに「性生活」の改善に力を注ぐのだろうか。
(前編より続く)
※「週刊文春」2012年10月4日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。
オーダーメイドでデザインできる「オジサン夢の形成手術」
2005年以降、高校生と大学生の性交経験率は男女ともに10ポイント前後下がる“草食化現象”が顕著だが(日本性教育協会調べ)、逆に中高年は年を重ねるに従い、セックスが充実すると考える人は多い。
オジサンたちの元気ぶりを象徴する形成外科の“ヒット作”がある。
銀座みゆき通り美容外科の水谷和則院長は、15年ほど前から陰茎彎曲症の手術を行ってきた。屈曲ペニスと呼ばれるこの症状は、勃起した陰茎が途中から「へ」の字に折れるものだ。右や左、あるいは下に折れたり、ねじれるケースもある。水谷氏は真っ直ぐに直す手術で日本ではトップレベルの症例数を誇る。
2年ほど前、水谷氏は治療中にふと閃いた。
“屈曲ペニスを直せるのだったら、勃起したペニスの形をオーダーメイドでデザインできるのではないか”
おそらくそんなことを思いついた医者は他にいないだろう。これが、40~50代の男性たちを喜ばせるアイディアになるのだ。
”白膜”の調整で向きも自由自在
メカニズムは、甲子園球場で7回裏に阪神側スタンドで宙に舞うジェット風船を思い出してほしい。水谷氏が言う。
「風船は真っ直ぐな円筒形に膨らんで伸びていますよね。あれはゴムの薄さが均一だからです。しかし、一部に細工をしてゴムを薄くしたり厚くしたりすると、必ず形が歪みます。
ペニスでいうと、竿の部分は、血液によって膨らむ海綿体です。これを白膜という丈夫な皮が包んでいます。ソーセージの皮のようなもので、その上を皮膚が被っている。白膜は海綿体が膨張すると、ある程度以上は伸びません。屈曲ペニスは伸びにくくなっている部分を薄くすれば伸びやすくなりますが、薄くすると切れる危険がある。そこで、薄い部分の長さを何ミリか縮めることで、向けたい方向に角度をつけるのです」
例えば、大きく反り返った勃起状態をつくるには、何カ所かを縫い縮めて調節することでグイッと上向きにできる。