理想の勃起状態を目指すプロセスとは
しかし、難しいのは、目の前で患者が勃起しているわけではないので、どこを縮めるのかわかりにくい点だ。調節するポイントを間違えれば、あさっての方向に勃起してセックスどころではない。そこで、
「あらかじめご家庭で勃起した状態の写真を撮って送ってもらいます。そうすると、大体、どの辺りを何度起こせばどういう形になるか把握できます。経験的に、何ミリ調節すれば角度がどのくらいになるかは頭に入っているので、青写真ができるんです。
次に、顔を整形する時のように、患者さんと勃起した時の形をどうするかデザインの打ち合わせをします。そうして手術の時に、今度は疑似勃起状態をつくるんです」
疑似勃起とは、包茎手術と同じ要領で、亀頭のエラの下部分から皮を一周切って、皮膚を脱ぎ降ろす。すると、皮膚がなくなったペニス本体がキノコのような状態になる。麻酔をした状態で根元を糸でキュッと強く縛る。鬱血状態になったところで生理食塩水を注射すれば、勃起した時と同じ形でパンパンに膨れあがるのだ。
「この時、デザインしたイメージとリアルな勃起のズレがないかをチェックします。そうして理想の形になるまで調節をするのです」
手術時間は約1時間半。狂いがないよう調節するのも大変だが、神経や血管を切ってしまうと、勃起そのものができなくなるので非常に難しい。水谷氏は子供の頃から手先が器用で絵を描いたり工作をするのが得意だった。一種の職人芸的な才能が、男性たちに理想のペニスを与えることになったのだ。
老化が始まっても性欲は20代の頃のまま
「これは結構、患者さんたちに喜ばれます。昔よりも勃起した時の角度が落ちてきたという40~50代の方にニーズがあります」
この年代で勃起角度を変えようとする人は、若い彼女ができたからという理由が多い。これは女性も同じで、40代以上で豊胸手術をする人は夫のためではなく、若い彼氏ができたからというケースが多い。
「40代を過ぎて体は老化が始まっても、性欲をつかさどる脳は20代のままです。欲求は高まっても、体が追いつかない。諦めきれない方々が、アンチエイジングという発想で、満足を得たいんですね」(水谷氏)
まさに『銀河鉄道999』で機械の体を欲しがったように、年齢に抗う加工術を人間は手に入れたのだ。
もともと男性には巨根願望があり、ペニス手術の分野は歴史が古い。亀頭増大手術は昔からあり、人工的な肉質注射で亀頭を膨らます方法に始まり、女性の豊胸に使うシリコンの注入が行われてきた。しかし、人工物の注射はトラブルにもなり、人に言えないことから泣き寝入りするケースも過去にはあった。
「亀頭に人工物を入れると、ごつごつしたり、形が崩れたり、また、陰茎に注入すると皮が固くなったり妙な膨れ方をしたりという問題が昔はあったそうです」(水谷氏)