厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。

※「週刊文春」2012年8月30日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

「日本人の性欲」に異変が!

 妻に性欲が向かないという問題は、不妊治療の現場では特に新しいテーマではない。しかし、2011年に発表された日本人の意識調査は、医学者たちを驚かせるものだった。日本人の性欲そのものに、異変が起きていたからだ。

 厚生労働科学研究班は男女3000人を対象に、「男女の生活と意識に関する調査」を行った。中でも話題となったのが、「セックスをすることに関心がない、嫌悪している」割合である。もっとも高かった世代が、男性は16歳から19歳。36.1%、つまり3人に1人がセックスに「無関心」「嫌悪」と回答した。2008年の17.5%から2年で倍増していたのである。

©iStock.com

 男性の不妊治療や性機能障害が専門の大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科・辻村晃准教授は、こう言う。

ADVERTISEMENT

「本来、16~19歳の男子はテストステロン(男性ホルモンの一種)の分泌が盛んで、最も性に対するアクティビティが高いはずです。未だ経験していない性交渉に興味津々で、些細なことで勃起する世代が、性交渉に無関心というのは信じがたい結果でした」

女性は全世代で「無関心」が増加

 セックスに無関心な世代は、次に45~49歳(22.1%)である。

 2章(日本男児肉食化の鍵を検証する)でも紹介したように、40代は加齢にくわえてストレスがテストステロンの減少を加速させるケースが多い。ゆえに性欲が減退すると思われるが、この世代に続くのが、再び若い20~24歳(21.5%)だった。テストステロン値がピークに達する年代である。

 女性の場合も、16~19歳(58.5%)と若い層が多い。女性は全世代で、無関心が増加した。

 

 セックスを敬遠する理由で多かったのが、男女ともに「面倒くさい」である。国家をあげて少子化を問題視しながら、生物として説明のつかない事態が起きるのはなぜだろうか。

 前出の辻村氏ら大阪大学の研究チームは、08年から2年間、いっぷう変わった研究を行った。性的興味と脳と人格の関連性を解析する、世界初の実験である。

「近年、MRTやPETという画像診断の技術が進歩したので、性的な刺激を受けた時、つまり勃起した時に脳のどの部分が活性化するか、射精直前までの推移を特定しました。また、アダルトビデオを見てもらいながら、ビデオの中のどの部分を興味をもって見たかを、視線追跡装置を使って検査し、見たコマ数を自動的に時間に換算。性的興味を定量化したのです」