「結婚しているが、勃起しない」は鬱病のサイン?
では、性欲減退の“現場”で何が起きているかを覗いてみよう。
浜松町第一クリニックは、日本で最もEDの症例数が多いと言われている。だが、04年に開院して以来、明らかにあるタイプの来院者が急増している。
一つは、「結婚しているのですが、セックスをやる気がないし、勃たないんですよ」と訴えてくるケースだ。同クリニックの竹越昭彦院長が言う。
「そういう人たちに、私は『夜は寝られますか?』と聞くと、眠れないと言う。食欲を聞くと、痩せたと言うし、会社に行きたくないでしょ? と聞くと、頷く。つまり、EDというより、鬱の症状なんです。昔から鬱病の初期症状として、肩凝りや眼精疲労、胃痛、勃起不全という身体症状がありました。最近は、EDだと訴えてきて、鬱病だとわかるケースが多い。勃起しないことより、鬱病を治すことが先決なので、メンタルクリニックを紹介するケースが増えているのです」
責任感が強く、真面目な男性ほど多く、「勃たないと、妻に浮気していると疑われる」と思い、自分を追い込んでしまうという。
不妊治療の夫婦に多い「膣内射精障害」
また、薬の副作用によるEDも増えている。
竹越院長が続ける。
「昔から使われている三環系抗うつ薬にはなかったのですが、近年、爆発的に売れているSSRIやSNRIといった抗うつ薬は、性欲減退、勃起力低下、射精困難をともなうことが多い。私は薬を換えるように指導しています」
時代を反映した新型のEDといえるだろう。
次に、竹越院長が指摘するのが、「オナニーED」なるものである。
「これは、10代から20代に多い。マスターベーションの時は勃起するのに、女性の膣に挿入すると萎えてしまうのです」
第3回(性交を成功させる「ゴールデンタイム」)で紹介した不妊治療を受ける夫婦に多い「膣内射精障害」のことだ。
「誤ったオナニーが原因です。勃起したペニスは約80グラムで、それを10キロくらいの握力で刺激を与えている。あるいは、手を速く動かしている。刺激が強すぎるから、女性の膣では締め付けが弱く感じてしまうのです。オナニーEDは習慣性があるため、治療は難しいことが多い」
世に勃起を促す薬はあるが、射精させる薬はないため、不妊に悩む夫に医師たちは2週間から3週間、マスターベーションを禁止させるケースが多い。これもポルノサイトなど、手軽に性欲を解消できる習慣がもたらした時代の象徴である。
(後編へ続く)
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